東京のコロナ重症者たった1桁。それでも「まん防」出す政権の政治的思惑

 

日本、例えば東京の場合は人口比での感染数はアメリカほどではないものの、既に東京ではピークアウトの兆候が出ていることからも、急拡大の後には急速な減少が起きる可能性は濃厚です。日本の場合は、アメリカより「ワクチン接種率が高いし、接種タイミングが新しい」ことで、ブースターを待たずして減少に向かう一方で、高齢者についてはブースターが後から追いかけるので余計に強固な壁ができる可能性があります。

ということは、一つの可能性としては、

  • 1月19日ごろ―――――1都10県(+)にマンボウ3週間発令
  • 1月25日にかけて―――東京、沖縄などで急速に感染減少
  • 1月末から2月第1週――3週間を待たずしてマンボウ解除

という経過をたどるというシナリオが成り立ちます。実は、オミクロンの特性としてそうなるし、この期間も「重症化率は極めて低く、未接種で基礎疾患の事例がほとんど」ということ、そして「重症者用のベッドの占有率は極めて低レベル」という状態は変わらないと思われます。

ですが、ここからが大切なのですが、「マンボウ」を出して、その後で劇的に感染が下がると「何となくマンボウの効果のように見える」わけです。更に、「その結果としてマンボウを少し早めに解除できる」と、政権がやっていることが「カッコよく」見えるに違いありません。

これが「手品」と「幸運」を掛け合わせた「筋書きのあるドラマ」というわけです。そうすると、内閣支持率は更に盤石なものとなり、夏の参院選へ向けての政権としての不安解消にはなるというわけです。

なんとも言えない見え見えの「台本」とも言えるのですが、一つこのシナリオに意味があるとしたら、それは地方(今回のマンボウ対象県を除く)です。

地方の各県はオミクロンの市中感染が遅れています。ですから、一旦感染がピークになってその後劇的に下がるというのは、恐らく2週間から3週間遅れとなると思います。ですが、1都10県でマンボウをやって、そこから地方への拡大をスローダウンさせると、ブースターが高齢者に「間に合う」ことで地方におけるオミクロンの拡大は「軽微で済ませる」ことができるかもしれません。

その点で言えば、全く効果がないというのは言い過ぎなのですが、その点を別にすれば今回のマンボウというのは、非常に巧妙に計算された「筋書きのあるドラマ」であり、98%が政治的パフォーマンスだと思います。そのために、経済活動を制限し、再びサービス産業などを苦境へと追い詰めるだけの意味は非常に薄いのではないでしょうか。

改めて確認ですが、現時点(マンボウ申請時)の東京の重症者は5人で、重症ベット占有率は1%です。

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image by: 首相官邸

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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