日本人の的外れな「ユニクロ叩き」。これでは中国政府の「思うツボ」だ

 

ユニクロも無印良品も新疆綿を扱う業者の中でも高いレベルで品質管理が行われている企業と取引しているはずだし、国際認証も取得していると思います。しかし、中国国内にある認証機関の認証では、米国は証拠として認定しないでしょう。また、新疆ウイグル地区には自由に出入りできないので、直接調査することもできません。また、ごく一部であっても、奴隷労働が関与している綿花があれば、紡績の段階で他の原綿と混ざってしまうので見分けはつかないのです。

しかも、ユニクロが綿花を購入しているのではありません。ユニクロは中国の縫製工場やニット工場から製品を仕入れています。それらの工場が、中国国内の紡績やテキスタイル企業から生地、糸を仕入れています。その綿糸を生産している紡績が綿花を仕入れており、その綿花商が農場から綿花を仕入れているのです。日本企業にとって、コンプライアンスを守っている企業と付き合うしかないし、その証拠は国際認証機関を信じるしかありません。

以上のようなことから、私は個人的に綿花の使用を規制するという経済制裁にはかなり無理があると思っています。経済制裁を行う時に自国の経済に最も影響が少ない商品を選ぶのは当然です。米国は綿産国であり、中国の綿製品を規制してもあまり影響はないということです。

私は、新疆綿よりも、太陽光パネルの原料の生産、イルミネーション用LED生産の方が手作業が多く、奴隷労働の可能性は高いと思いますし、その証拠となる動画も存在します。しかし、クリスマスを彩るイルミネーションを規制しようという話は聞いたことがありません。米国は、自国の都合で経済制裁となる商品を決定しているのです。

以上のようなことから、私はユニクロへの非難に対しては同情的なのです。

3.中国は反社か、友好国か?

本来ならば、日本政府が真っ先に中国の人権問題に抗議すべきであり、同時に、独自の経済制裁の中に新疆綿は含めないという主張をしても良いと思います。しかし、日本政府は直接的に強く中国を非難することはありません。「遺憾の意」を伝えるだけです。その根拠は内政干渉はしないという原則にあります。

これは日本国内にも見られる原則です。日本の警察は親が子供を虐待しているという通報があっても、すぐに子供を保護しません。親子の問題は家庭内で解決するのが原則であり、警察は関与しないという日本の常識があるからです。一応、事情聴取に言っても、子供が「虐待されていません」と証言すれば、口頭での注意程度で済ませることが多いようです。しかし、欧米諸国では子供を保護することが優先されますし、外国であっても人権弾圧があれば見過ごしません。

日本政府が中国政府を非難しないように、日本企業の経営者は政治問題には関与しないのが原則です。自社が犯罪を起こせば謝罪しますが、国が犯罪を起こしても、それは国の責任です。企業の経営者には関係ないと考えます。

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