日本人の的外れな「ユニクロ叩き」。これでは中国政府の「思うツボ」だ

 

今回の人権問題は、ポンペオ前米国国務長官が「ウイグル族に対する人権弾圧はジェノサイドである」と認定したことで火が点きました。ジェノサイドとは、ナチスによるユダヤ人に対する集団殺戮を意味する国際犯罪です。ジェノサイドと認定されたら、西側諸国は見過ごすことはできません。これを許容することはナチスに同調したことになるからです。

ということで、西欧諸国は次々と対中非難決議を採択しました。しかし、中国との経済交流を止めたわけではありません。「世界の工場」「世界第2位の経済大国」との経済的分離はどの国も容易ではないからです。しかし、人権保護は国家として守らなければならないし、ビジネスより優先される課題であると認識しているからです。

4.ユニクロは村八分にされるのか?

現在、日本社会では反社会勢力との付き合いは犯罪であるという認識が定着しつつあります。しかし、昭和の時代は、芸能やスポーツの興業、株主総会運営において、反社会勢力と企業が付き合うのは珍しいことではありませんでした。当時の日本社会はある程度の必要悪を許容していました。

現在の西側諸国の世論では、中国を「反社会勢力」と認定しました。しかし、日本政府は中国を反社会勢力と認定していません。日中友好を基本とした友好国と認定しているのです。国がこんな状態ですから、企業経営者が政治に関与しないと発言しても不思議ではありません。

ここから個人の問題になります。例えば、あなたの勤めている会社が中国生産、中国市場に依存している場合、あなたは上司や社長に中国ビジネスを停止するべきだ、と言えるでしょうか。あるいは、身近な人権問題という意味では、セクハラ、パワハラがあります。社内でセクハラ、パワハラに悩む社員がいたら、あなたは声を上げることができるでしょうか。そして、組織から追い出されてもそれに耐えられるでしょうか。

中国はけしからん国です。したがって、中国に逆らうと制裁されます。その前提でどうするか決めなければなりません。私は、人権問題はビジネスより重要なので、対中非難の姿勢を打ち出すべきと考えます。しかし、経済的な理由から、米国が主張する新疆綿の規制については賛成できない、と思います。制裁の内容については、各国で判断すべきです。

私の個人的な経験から言っても、言いたいことがあれば喧嘩になっても言うべきです。友人だから言える、と言ってもいいんです。日中友好を維持するためにも、中国には人権を守ってほしいと率直に言えばいいと思います。

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