東大前刺傷事件の犯人を生んだ、日本の「東大信仰」という“カルト宗教”

 

そういえば、TBSなどのテレビに出演していた頃、まだwikipediaも整備されておらず、相手が何者であるかを知るには、直接本人に聞くのが一番手っ取り早かった。そこで、初対面の挨拶や話題は、故郷や学歴ということになることが多かった。そう、銀座のクラブや西麻布のラウンジと同じである。

「早稲田?慶応?え、東大!すごいね」
「彼は、東大だから優秀なんだよね~」

東大信仰は、日本型エリートにとって居心地がいいのである。なぜなら、世界を俯瞰し現状を認識する能力の高くない彼らにしてみれば、「東大卒」は10代のころに手に入れた、自己承認欲求を満たす数少ない「成果」に他ならないからである。とくに、NHKとTBSは、当時から東大卒の比率が圧倒的に多かった。だから『東大王』などという…以下自粛。

よって、この二局の人たちと話すときは比較的容易に歓心を買う方法があった。「東大賛美」の言葉を羅列しておけばよいのである。もちろん、心にもない空疎な言葉だったので具体的な文言の記憶はありません。はい、すみません(笑)。

さらに、地方の公立大学である母校(都留文科大学)の名前でも出せば、彼らの機嫌はよくなるのだ。18歳や19歳のときの受験結果が何歳になっても通用するのである。良い国だ。日本の教育リテラシーがいつまでも高くならないのも頷ける。いや、失礼、低レベルに無自覚だから永遠に高くなることもない。ことばは難しい。

NYTで働いていた時のこと。特派員たちと大学時代の友人の話になったことがある。確か私の大学友人のひとりがタイムズに遊びにきたことがきっかけだったと記憶している。彼は日本人である。すると、ひとりの特派員が、友人の帰った後、私に他の彼のことを聞いたうえでこう言ったことを思い出す。

「なぜ日本人しかいないんだ。大学は世界中から学生が集まっているのが普通だろう。ぼくの大学友人たちだって、カナダ人(モントリオール)、インド人(ニューデリー)、スコットランド人(エジンバラ)、中国人(北京)、シンガポール人(シンガポール)とざっと挙げただけで各国にいるよ。日本の大学は日本人しか入れないのか?」

私の出身大学が特殊なのではない。当時は東大だろうが、早稲田だろうが、慶応だろうが、日本語でのテストが主流で、よって海外の受験生にとっては日本語という壁があり、結果、日本人しか存在しない大学というのが当然の状況であった。

しかし、世界は違うのである。シンガポール大学や北京大学が世界的なレベルになっているのと比して、東大が世界で誰も相手にされないほど低レベルであることをマスコミのエリートたちが知らないはずもない。なぜだろう。なぜ彼らは現実を知りながら『東大王』などという恥ずかしい番組を作ってしまうのだろう。もしかして、いや、信じたくないが、彼らは本当の◯◯なのかもしれない…(今回は伏字にしました)。

社会に出ても「東大信仰」を引きずった日本のエリートバカは無自覚ゆえに救いようがない。それはもう仕方のないことだ。だが、後生だから、これ以上純粋な国民を惑わすことはやめてほしい。さもないと、東大ごときで命を狙うようなバカがまた発生してしまう。

※ なお、筆者は東大信仰というエリートシステムを批判しているのであって、東大受験を目指している学生の個人的な努力を否定するものではありません。

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