プーチンの真意は?ロシアがウクライナに「武力侵攻はしない」と断言できる訳

 

しかし、もし米ロがウクライナを舞台に武力衝突を起こすような事態が万が一起こった場合には、対応は一変する可能性が高いでしょう。

その場合、あまり可能性は高くないとみていますが、ロシア側に付いて参戦するか、それとも部隊の派遣はせずにバックアップに徹し、外交舞台で欧米諸国への激しい非難を繰り返してロシアを援護射撃するか、いろいろな選択肢が考えられます。

ちなみに外交的なアセット(中東諸国、アフリカなどからの対中外交支持)をロシアのために用いるかどうかは、ロシアとのその時の関係次第だと思いますが、仮に投入した場合は、かなり大きな貸しをプーチン大統領に与えることになります。

では、逆にアメリカそしてNATOはロシアに対して、ウクライナのために、武力行使に踏み切るでしょうか?

こちらもNOでしょう。

ロシアに対するプレッシャーとして、部隊を送っているにすぎず、これからどれほどアメリカそしてNATO各国から増派があったとしても、10万強の戦力を持つロシアとまじめに交戦するつもりはないでしょう。

それはロシアも重々承知しているので、国内向けアピールを最優先して、【ロシアは引き下がらない。そうロシアの同胞のために】というプロパガンダが成立する事態になっているのでしょう。

では欧米は、特にアメリカはなにをしているのでしょうか?

これもバイデン大統領にとっては、あくまでも国内向けアピールの一環で、非常に嫌っているにもかかわらず、プーチン大統領と同じように【強いリーダー像の演出】でしょう。

特に秋に控える議会中間選挙に向けて、非常に旗色が悪く、実際にこれまで大きな成果を何一つ残せていない状況を何とか反転させたいとの思いを、ウクライナを守ることは人権擁護や民主主義の堅持という民主党ならではの原理原則に沿うということを盾に、民主党支持者からの支持回復を狙っていると思われます。

さらには、世界を協調どころか、さらに分断させてしまう方向に導いてしまったことで(アフガニスタン問題とイラク問題)、同盟国からの信頼も大きく揺らいでいますので、国際情勢においてプレゼンスがかなり下がったと非難されるアメリカの威光を回復させるために、“憎き”ロシアとの戦いの前線にcome backしたというイメージを与えたいのではないかと思われます。

しかし、仮にウクライナを舞台に開戦するような事態になってしまったら、バイデン大統領の目論見も外れ、再度、アメリカを終わることのない泥沼の戦いに引きずりこむことになるでしょう。

いろいろな状況に鑑みて、開戦することはないでしょうし、ましてや米ロの直接戦争という恐ろしい状況には陥ることはないと考えますが、そのような状況下で、日本はどのように振舞うべきでしょうか?または振舞うことが出来るでしょうか?

まず、すでに行われているように、現地にいる邦人にウクライナからの退避を命じ、安全を確保するのは大前提です。そして直接的な危険を回避したのちは、あくまでも【事態のエスカレーションを非常に懸念しており、一日も早い状況の鎮静化を願う】という対応に徹するのがよろしいかと思います。

ウクライナは結構な親日国ではあるのですが、あまり他国の実際の事情に沿ったロジックに乗せられて何らかのコミットメントを背負うのはお勧めしません。

それは、アメリカもロシアも、欧州各国も、すべて例外なく、今回の事態の裏側には、それぞれの国内事情が絡んでおり、ピュアな外交・安全保障マターではないと考えるため、そこで当事者になることは賢明ではないと考えるからです。

そしてIS絡みの問題がそうであったように、自ら当事者にされてしまうような状況に足を踏み入れないことが得策だと、私は強く考えます。

いろいろと書いてみましたが、皆さんはどうお考えになるでしょうか?

(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2022年1月28日号より一部抜粋。この続きをお読みになりたい方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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