プーチンの真意は?ロシアがウクライナに「武力侵攻はしない」と断言できる訳

 

新政権下でロシアの言うことを聞かず、どんどん親欧米路線を進め、ついにはロシアが最も嫌うNATOへの加盟を目指すというレッドラインを超えたウクライナ政府ですが、この選択は、プーチン大統領に退けない状況を強要することになったと言えます。

2014年の危機の際には、クリミア半島はロシア系住民が多く、自らをロシア人と名乗るような“親ロシア”勢力が多かったことから、プーチン大統領としても【同胞ロシア人をウクライナから守る】という大義名分を立てやすかったため、国内的な支持は一気に高まりました。

しかし、今回、“ウクライナ”領には、もう親ロシアの勢力はあまり残っておらず、仮に軍事的にロシアがウクライナを占領し、再統合したとしても、今のロシアの経済力や影響力では、反ロシア勢力が渦巻くウクライナを統治するだけの余裕はないことと、【同胞を守る】というアピールがしづらい現状があります。

そのような状況で、ウクライナに【NATO加盟という餌】をぶら下げてちょっかいを出してくるアメリカと欧州各国の露骨な挑発が明らかになり、ロシアとしては【進むも地獄・退くも地獄】という状況に追いやられ、プーチン大統領は【強いロシア・欧米の企みに屈しないロシアのリーダー】というイメージを国内にアピールするために、かなり迅速に10万人規模の部隊を国境地帯に送り、命運を握るルカシェンコ大統領のベラルーシを巻き込んで、全面的に対抗する意思を明確にすることを選択しました。

国境地帯で軍事演習を重ね、かつ複数の侵略ルートのパターンを敢えて見せることで、自国の庭先に反ロシアの壁が迫ることへの徹底抗戦の覚悟と姿勢を示しています。

21日の会談の失敗を受け、アメリカが8,500名強の部隊をウクライナに送り、展開させていますが、その本気度はどこまでのものでしょうか?

ちなみにこの動き、ロシアサイドから描かれている・映されているアングルから見ると【アメリカの軍がロシア・ウクライナ国境に迫り、ロシア側に攻撃を仕掛ける機会を窺っている】というイメージになっており、「これはロシアの国家安全保障への挑戦であり、ロシア国民にとっての危機」というように描かれています。

そして何よりも「特に自国の権益を有するわけでもなく、かつ自国の安全保障問題でもないにも関わらず、ウクライナに派兵する大義名分はない。これは侵略者の化けの皮が剥がれた証拠」とのイメージをどんどん展開し、アメリカの横暴で勝手な、そして傲慢なイメージづけを行っているのがロシア側の動きです。

これに対して、アメリカやNATO各国はどのように、今回の部隊派遣とロシアへの外交的な攻撃を正当化しているのでしょうか?

典型的なのは【NATOは常に新規加盟への門戸を開いており、自ら加盟を望む国の要請を断ることは出来ず、またその安全を脅かすいかなる勢力に対して断固として対抗するのが、民主主義の精神】という理由づけです。

同じような理由・正当化でこれまでどれほどの国で、不必要な戦争がアメリカなどによって引き起こされたのか、皆さんはご記憶されているでしょうか?

ロシアの動きにより、ウクライナに対する危機と緊張が高まっているというのは、決して褒められたものではないですが、元はと言えば、あまり報じられませんが、ウクライナがNATOへの加盟を申請する裏で、2014年来の恨みを晴らすべく、ロシア・ウクライナ国境に軍を展開させたのが、事の起こりと言われています。

つまり、若干怪しいところもありますが、ロシア側から見ると、自国の安全保障の危機が迫っていて、恐らくその背後にはアメリカと欧州が控えているというように見えるでしょう。

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

print
いま読まれてます

  • プーチンの真意は?ロシアがウクライナに「武力侵攻はしない」と断言できる訳
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け