「大変遺憾なことだ」「政府として引き続き情報収集に努める」。1月27日には、北朝鮮が1月だけで6度目となる弾道ミサイルを発射したが、首相官邸で岸田氏が記者団に発する言葉はそれまでの発射時と変わりない。遺憾には「残念」「心残りのこと」という意味があるが、予算案資料の誤りや統計書き換えなどでも首相や閣僚が多用しており、もはや政権の政治用語になっているように映る。
「私には、中国との関係改善こそがアジア地域の安定に繋がる、という強い確信があります」
「韓国が取る態度には、率直に言って腹が立ちます。それでも、北朝鮮と対峙する際、韓国の協力抜きに日本単独での行動はあり得ません」
4年7カ月、外相に在任した岸田氏は自著『岸田ビジョン 分断から協調へ』(講談社)の中で、隣国との関係をこう評している。毅然と対応しつつ「したたかな外交」が必要であるとも説いているが、首相が描くイメージが現時点で多くの人々の納得感を得られているとは言い難いだろう。
自民党担当の全国紙政治部記者は辛辣だ。「首相は憲法改正も、敵基地攻撃能力の検討も掛け声だけは勇ましい。しかし、その多くは党本部や岸信夫防衛相に丸投げ状態で、公明党との調整も世論喚起する動きも緩慢だ。外交も弱腰が目立つばかりで、このままでは『言うだけで動かぬ首相』になってしまうのではないか」。
政権発足後100日間の「ハネムーン期間」が過ぎ、徐々に見えてきた岸田政権の姿。しかし、そのカラーは曖昧模糊としたままだ。岸田氏が昨年9月の自民党総裁選で訴えた納得感を得るための説明力や発信力は披露されず、コロナ禍で苦しむ国民に安心感を与えるようなリーダーシップもいまだ見えてはこない。
image by: 首相官邸