“疑惑の判定”続出、開会式の茶番劇。北京五輪を「政治ショー化」する中国共産党

 

その開会式ですが、日本国内では昨年の東京五輪と比較して、中国の演出を絶賛する声も少なくありませんでした。しかし、それはあまりにアンフェアな見方だと思います。東京五輪の開閉会式では、関係者がさまざまなスキャンダルで辞任、解任されるということが、開催直前まで相次ぎました。たしかに問題はあったかもしれませんが、では中国はどうなのか。

今回の総合演出を手掛けたのは、映画監督のチャン・イーモウ氏です。しかし、そのチャン・イーモウ氏も、これまで不倫や隠し子といったスキャンダルで騒がれた人物です。コン・リーやチャン・ツィーと不倫関係が取り沙汰され、また、複数の女性と関係を持ち、7人の隠し子がいるともいわれ、一人っ子政策に違反してきた疑惑もありました。もしもチャン・イーモウ氏が東京五輪の演出監督だったとしたら、過去の不貞を週刊誌などが暴いて、きっと引きずり降ろされていたことでしょう。

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しかし、中国ですから、党中央が決定したことは絶対に正しいことであり、覆りません。もちろん、党中央の決定した事項に水を差すようなスキャンダルは絶対に報じられません。報じた方が罰せられるからです。

チャン・イーモウ氏は、2008年の北京オリンピックでも開閉会式の総合演出を担当していました。開会式での歌の口パク疑惑、さらには56の少数民族の子供を登場させたものの、実はそれらはすべて漢民族だった「やらせ」だったと判明し、批判が起こりました。

また「やらせ」か五輪開会式、「少数民族の子ども」実は漢民族

にもかかわらず、中国政府は今回もチャン・イーモウ氏に総合演出を任せたわけです。

その一方で、2008年の北京オリンピックのテーマソングを作詞した有名な作詞家・林夕氏は、今回は担当していません。それもそのはず、林夕氏は香港人で、ここ数年の中国共産党の香港支配強化に反発し、香港の民衆デモを支持し、そして現在は台湾に移住しているからです。香港にいたら、逮捕されていたかもしれません。

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自由を求める人は中国を離れ、中国共産党に忠誠を誓う「愛国者」が今回の北京冬季オリンピックを演出したという構図です。そして人民には真実は知らされません。

東京五輪では、開催に反対する団体や活動家がデモを行い、開会式でも会場前でシュプレヒコールを叫んでいました。民主主義国である日本では、こうした開催反対の世論にも気を使う必要がありました。しかし、中国では開催反対の声などありません。声を上げた途端に逮捕です。実際、香港の社会活動家の古思堯氏は、開会式にあわせて中国政府の香港の出先機関へ抗議活動を計画していたものの、それを察知した当局に逮捕されてしまいました。しかもその容疑は「国家政権転覆煽動罪」です。

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東京五輪のとき、反対者の多くは、政権批判も込めたデモやシュプレヒコールを展開していました。また、メディアもそれを煽っていました。しかし中国であれば、それらはすべて「国家政権転覆煽動罪」で逮捕です。

中国の開会式に賛辞を送る人たちは、この1年間、どれだけ中国で自由の声が弾圧されてきたのか、そのことに少しでも思いをはせていただきたいと思います。

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