世界的エンジニアが喝破。トヨタが「Tesla」と同じ土俵で戦えないワケ

 

ここでTeslaとAppleに話を戻すと、それぞれ粗利益率が約30%、40%という結果でした。これはハードウェアを売っている会社としては驚異的に高い数字です。パソコンメーカーや自動車メーカーは、10~20%が普通で、例えばトヨタ自動車は直近の決算で粗利益率は約16%でした。

TeslaとAppleの両方に共通する点は、二つあります。どちらもハードウェア・メーカーでありながら、ソフトウェアで勝負(差別化)をする会社であり、かつ、心臓部のチップには自社製品を使っている点です。

ソフトウェア企業の粗利益率はとても高いことが知られています。代表的な、Microsoftの場合だと、その粗利益率は80%を超えています。これは、ソフトウェアの「原材料」が不要なためです。ソフトウェアの売上原価として計上されるのは、電気代と、(消耗品扱いされる)サーバーの減価償却費ぐらいです。

TeslaとAppleは、ハードウェア・メーカーではあるものの、大きな価値はソフトウェアやサービスにより生み出しているため、粗利益率が通常のハードウェア・メーカーよりも高くなるのです。特にTeslaの場合、オートパイロットや自動運転機能はハードとは別売りのソフトウェアオプションなので、その部分だけ見ると粗利益率はほぼ100%なのです。

自社製チップも粗利益率を高くすることに大きく貢献しています。心臓部のチップをNvidiaやIntelから購入する場合、その購入価格すべてが「売上原価」に加算されます。

例えば、トヨタ自動車がNvidiaから自動運転用の2000ドルのチップを購入していると想定しましょう(実際、Teslaも昔はそうしていました)。その場合、その2000ドルが売上原価に加わります。

Nvidiaは、そのチップの製造をTSMに委託していますが、NvidiaがTSMに製造原価として支払っているのは800ドル程度なのです(40%)。つまり、2000ドルのうち、1200ドルはNvidiaの粗利益なのです。Nvidiaは、その粗利益を使って、莫大な研究開発費を回収し、その後は利益をあげるのです。

そのため、トヨタ自動車が自動運転機能を4000ドルで売ったとしても、粗利益は1000ドル、粗利益率は25%にしかならないのです。

しかし、Teslaは今は自分で開発したチップを採用し、Samsungに製造を委託しているため、(値段が同じだと仮定すると)製造原価は800ドルしかかかりません。同様に4000ドルで自動運転機能を販売したとすれば、利益率は80%になります。

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