北京五輪の女子フィギュアスケート、女子シングルのフリーが17日に行われ、ドーピング疑惑の渦中のカミラ・ワリエワはミスを連発して4位に終わった。優勝・準優勝は共にワリエワと同じエテリ・トゥトベリーゼ・コーチが指導するアンナ・シェルバコワとアレクサンドラ・トゥルソワ。ワリエワ失速の中で金、銀のメダルを獲得した指導者のトゥベリーゼだが、ロシアの大衆紙モスコフスキー・コムソモーレツは10日付の記事で、「メルドニウムに代わる新薬を探している」と2019年に行われたインタビューの中で語っていたことを報じた。
コーチのトゥトベリーゼに新疑惑発覚
メルドニウムはWADA(世界ドーピング機構)が2016年に禁止した薬物だ。
メルドニウムは疲労回復に効果があり、今回ワリエワ選手から検出したトリメタジジンはメルドニウムと同じような効果があると言われている。
トゥトベリーゼコーチは当時、「メルドニウムが使えなくなる日は分かっていた」としたうえで、「アスリートの疲労回復に役立つビタミンのようなものが必要だった。私たちは何か他の薬を探さなければならなかった」と語っていたという。
トゥトベリーゼコーチはワリエワはじめ、指導する選手に薬物を処方していた形跡があるとモスコフスキー・コムソモーレツは報じている。
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ROC同行医師はドーピング違反の前科あり
疑惑の目を向けられているのはトゥトベリーゼコーチだけではない。
ROCの同行医師であるフィリップ・シュベツキー氏は、2008年夏の北京五輪のロシアボート連盟のコーチを務めていた大会前に選手達に不正輸血を行い、6選手が資格停止処分を受け、ロシア代表は1年間、国際ボート連盟主催の試合に出場停止になった。
シュベツキー医師も同様に処分され、2007年から2010年の4年間の資格取得処分を受けたのだ。
他国のスポーツ界では永久追放処分になるところ、シュベツキー医師は処分が解除されると、ROCフィギアスケート代表の医師として復帰。
2016年のアイスダンスで選手から違法薬物が検出された際には、シュベツキー医師の関与が疑われていた。
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「選手は使い捨て」卑劣なやり方に怒りの声
トゥトベリーゼコーチはフリーの演技でふがいない結果に終わったワリワラに同情する素振りは見せず、詰めより「なぜあきらめたの?なぜ戦いをやめた」と責めた。
その様子は海外だけでなくロシア国内でも批判され、Twitter上では「#トゥベリーゼは国辱だ」というハッシュタグも存在した。
銀メダルを獲得したトゥルソワも競技後に、トゥトベリーゼが祝福のハグをするのを身をよじって拒絶、コーチに厳しい言葉を投げかけ立ち去った。
報道ではトゥルソワがライバルのシェルバコワに金を奪われ、銀どまりだったことに不満を持ったからだと報じられたが果たしてそうか?
トゥトベリーゼコーチのやり方の犠牲になったのは今回のワリワラだけではない。
ソチ五輪で金メダルに輝いたユリア・リプリニツカヤは極度の食事制限の弊害で拒食症に陥り、19歳で現役を引退。
平昌五輪の金メダリストのアリーナ・ザギトワも19歳で代表選手から外れている。
トゥトベリーゼコーチの若い選手を使い捨てするやり方はロシア国内でも以前から批判されており、これが今回のドーピング疑惑で世界に晒されてしまった形となっている。
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フィギュア界に一石を投じる出来事になるか?
10代半ばでピークを迎えてしまうロシア選手に対して、銅メダルを獲得した日本の坂本花織は21歳。記者会見では目を輝かして次の五輪への挑戦を宣言した。
男子フィギュア・ソチ五輪代表で国学院大学助教授の町田樹氏は日刊スポーツのインタビューで選手の若年化を危惧し、今後加速化するのではないかと推測。
「選手の競技人生が長く続かない競技に希望を見いだされることはない」と語っている。
未来ある15歳の少女に“ドーピング違反者”というレッテルを貼ることになってしまった今回の騒動。フィギュアスケートのみならず、あらゆるスポーツでドーピングとの闘いは続いていきそうだ。