たった月6万円で生活できるか?維新「ベーシックインカム案」の無理筋

2022.03.04
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日本維新の会が「日本大改革プラン」の中で導入を謳うベーシックインカム案。基礎年金や児童手当、生活保護を廃止し月6万円の支給を検討しているとのことですが、果たしてこの金額で暮らしは成り立つのでしょうか。今回、元経済誌『プレジデント』編集長で国会議員秘書の経験もあるITOMOS研究所所長の小倉健一さんは、維新案の問題点や疑問点を指摘するとともに、一月を6万円で生活できるかを具体的に検討。その結果は予想を上回る厳しいものでした。

プロフィール小倉健一おぐら・けんいち
ITOMOS研究所所長。1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。

維新のベーシックインカム支給額「月6万」で人は生きていけるのか

月7万円を支給する代わりに年金も生活保護も必要なくなるとして、元経済財政担当相でパソナグループ会長の竹中平蔵氏がぶち上げたベーシックインカムの導入論。ツイッターでは<#竹中平蔵は月7万円で暮らしてみろ>というハッシュタグがトレンド入りを果たした。

今回、日本維新の会が導入を検討しているベーシックインカムの支給額は、月6万円(高齢者は8万円)だという。この金額の設定について、「国民年金の満額支給額である<月6万5,000円>を念頭においている」(NHK・竹田忠解説委員)という指摘がある。

維新ホームページ「日本大改革ってホントに必要なの?」には、こういう記述がある。

複雑な制度の中で、現金で支給されている部分はベーシックインカムに統合し、シンプルなものにしていきます。これは行政コストの削減にもつながります。こうした整理統合を進めても、医療・介護・福祉など社会的困窮者に必要な多くの制度は残りますので、安心してください。

として、<基礎年金・児童手当・生活保護の現金部分・etc>を<ベーシックインカム(最低所得保証制度)>によって、月6万円(高齢者は月8万円)を支給し、<医療・介護・福祉など多くの制度はしっかり!維持>ということだという。

ベーシックインカムの導入を支持する経済評論家の山﨑元氏は、「自治体が、支給対象者の所得や資産を調べて、受給資格があるかどうかを判断するような仕組みだと、生活保護をあてにしていてもそのお金をもらえないかもしれない。セーフティーネットとして不安定だし、所得や資産の調査等に手間とコストが掛かる」(「維新の会に教えたい!ベーシックインカムの要点」東洋経済オンライン)と現行制度の問題点を挙げているが、<多くの制度はしっかり!維持>されている維新の案では、これらの問題点はそのまま残ることになる。

生活保護には、「生活扶助(日常生活を送る上で必要な費用)」「住宅扶助(住居に住むための家賃)」「教育扶助(子供が義務教育を受けるのに必要な用)」「医療扶助(生活に困窮している人が医療サービスを受けるための費用)」「介護扶助(生活に困窮している人が介護サービスを受けるための費用)」「出産扶助(出産にかかる入院費や衛生用品の費用)」「生業扶助(就職に必要な技能の習得にかかる費用)」「葬祭扶助(遺族が生活に困窮していて、かつ他に補助してくれる人がいない場合の葬式費用)」という8つの扶助がある。このうちベーシックインカムに代替される「現金部分」は「生活扶助」のみだ。

「複雑な仕組みをシンプル」にするのが、本来のベーシックインカムの役割であるはずだが、維新がベーシックインカムだと主張するこの案では、生活保護制度において、ほとんどシンプルになっていない。維新の政策責任者である衆議院議員・足立康史政調会長(国会議員団)は「維新は小さな行政を目指している」というが、この仕組みで「行政コスト」がどこまで下がるのかはかなり不明だ。

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