たった月6万円で生活できるか?維新「ベーシックインカム案」の無理筋

2022.03.04
 

私のTwitterには「炊き出しに並べば、腹一杯食べれる」という情報も寄せられたが、炊き出しに並ばねば破綻する支給額というのは、セーフティネットとは呼べまい。

やはり、維新が政権を取るからにはこれまでの平穏な人生をそのまま送るなどという「甘い」考えは捨て、生活設計の根本から自己変革を求められるのだろう。

ヒントは、ブロガー紫苑さん以外にもある。月5万円で生活しているというミニマリスト「なにおれさん(30)」だ。氏のブログから、維新の給付該当部分の支出額を抜き出してみる。

  • 電気:3,000円
  • ガス:500円
  • 水道:1,500円

「電気代は夏場の2ヶ月くらいを除ければそれほど難しくはありません」という。通信費は、楽天を使い3,000円で抑えるという。

  • 食費:15,000円

「朝食は食べない」「昼食200円、夕食300円」「基本は完全自炊」「閉店間際の半額商品を狙う」ことで「食費15,000円はそれほど難しくありません」という。

「現実的に、娯楽や交際費に使えるお金はほとんどありません」と氏が振り返るように、人間と会うから交際費・衣服代がかかる。移動をするから交通費がかかるのだ。「電車に乗らずに歩く」「消費に娯楽を求めず、お金のかからない創作活動を趣味に持つ」ことが決め手になろう。お酒、タバコなどもってのほか。「シャワーは太陽の光で水を温めるか、数日に一度銭湯にいく」という覚悟が大事だ。

これで雑費8,000円を加えても、月の支出はトータルでわずか3万1,000円。1日1,000円で過ごせる。維新案でも2万9,000円の貯金ができる計算となった。

二人の達人の支出を探ったが、こんなことができるのはごく少数である。

ネットで検索すると、低所得者には、計画的な支出ができず、また意思も弱い人が多い。お酒をやめられなかったり、外食をしてしまうなどした結果、その金額を捻出するためにエアコンは基本つけない。携帯は解約し、1日1食、シャワーも週に1度などで暮らす人などが頻出する。支給日が近づくと生活費は底を尽き、米だけで過ごすこともしているようだ。平均の支出額から考えてもこちらのほうが実態に近い。

紫苑さんやなにおれさんという、節約の達人による万全の計画を立て、実行能力、そして信念がない限り、月6万円では破綻が待ち構えている。

食費は1日500円までで、賞味期限切れショップをよく利用し、シャワーを太陽の水で温める、など一般人の想像を絶するノウハウを積み重ねてやっと生きていける世界。明治維新、昭和維新に続く、令和維新では、働けない貧困層に支出24%カットの現実が待つ。

image by: 日本維新の会

小倉健一

プロフィール:小倉健一(おぐら・けんいち) ITOMOS研究所所長。1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。

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