たった月6万円で生活できるか?維新「ベーシックインカム案」の無理筋

2022.03.04
 

もう一点、不思議なのは、月々の給付額が現役世代よりも高齢者の方が2万円高いところ。経済を回す目的なら現役世代に手厚く給付すべきだし、消費支出の平均額(医療費を含む)は50代が最も高く、次に40代、60代、30代、70代、20代と続く(総務省「家計調査年報」/2020年)。また、生活保護世帯であれば、そもそも医療費は国費であり、無料だ。高齢者に給付を手厚くする理由が見当たらない。複雑な仕組みをシンプルにするという制度趣旨にも反する行為だ。

維新の足立康史議員によれば、ベーシックインカムの導入にともない毎年36兆円規模の資産課税を導入することになる。資産課税の詳細は別稿に譲るが、端的に言えば、貯金や国債をはじめとする日本人が持つあらゆる資産に1%の課税をするもので、ネットでは「貯金税だ」として批判の声が上がっている。36兆円とは、消費税約18%相当の税収であり、国民の負担額では、「消費税28%時代」が到来するということになる。

もし維新が政権を担い、ベーシックインカムが導入された場合、貧困層には、どのような生活が待っているのだろうか。年収100万円未満で生計を立てている人の支出額の平均を元に考えてみたい。

総務省「全国家計構造調査(旧全国消費実態調査)」の「2019年全国消費実態調査 / 全国 / 家計収支に関する結果 / 単身世帯」における、現金給付該当箇所について考えてみたい。維新案では、生活保護制度における「住宅扶助」「教育扶助」「医療扶助」「介護扶助」「出産扶助」「生業扶助」「葬祭扶助」はこれまで通り国費で支給される。

※年収100万円未満の平均月額支出。生活保護では免除となる医療費や住居費等は除いた。

  • 食費 27,783円(一日あたり926円)
  • 電気代 4,954円(一日あたり165円)
  • ガス代 2,502円(一日あたり83円)
  • 水道代・その他 2,708円(一日あたり90円)
  • 家事用品・家具 2,792円(一日あたり93円)
  • 衣服代 2,361円(一日あたり78円)
  • 交通費 5,651円(一日あたり188円)
  • 通信費 5,730円(一日あたり191円)
  • 文具・書籍・レジャー代(教養娯楽)10,818円(一日あたり361円)
  • 理容代・石けん代 2,530円(一日あたり84円)
  • タバコ 720円(一日あたり24円=約1本弱)
  • 交際費 5,536円(一日あたり185円)
  • 雑費 4,440円(一日あたり148円)

合計で、月額78,425円(一日あたり2,614円)となる。維新の6万円では到底足りない結果になった。年収100万円未満の世帯の平均支出より、全体で24%を削らないと収支が赤字になる。現状の生活保護制度でも単身40代の生活扶助基準額は、76,420円(東京都・府中市)、68,430円(北海道・留萌市)だ。現状の生活保護給付基準ですら、低所得生活者の平均支出からすれば赤字であり、その東京基準よりも24%低い6万円の給付。どうしたものだろうか。

ネットに月6万円以下で生活している人がいないか探したところ、「月5万円だけで毎日を楽しく生きる」というブロガー紫苑さん(70)の生活が公開されていた。

それによれば、食費は11,564円、外食費1,500円、光熱費(水道代含)7,392円、通信費7,560円、医療費600円、交通費3,000円、雑費5,000円、合計3万6,616円。住宅費は購入済みなので家賃は発生しないので、医療費だけ計算に入れなければ、維新のベーシックインカム案に近い形で考えられるだろう。先の平均額と比べると、水光熱費は削減が難しい。まずは食費を1日500円以下にし、1日1本のタバコをやめ、1日200円程度の交際費を100円にする必要が出てくる。

ブロガー紫苑さんは、節約術として「賞味期限切れショップをよく利用する」「(欲しいものがあっても10分待って)冷静さを保つ」「買い物のときに、いちいちこれはうどん何杯分かを考える」「新しい服をほとんど買わない」「野菜が一度に使い切れない場合は干し野菜にする」のだという。

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