楽天シンフォニーが米情報通信大手のAT&Tとの協業を発表。スペインバルセロナでのMWC(モバイルワールドコングレス)では、楽天モバイルの完全仮想化ネットワークを管理している「SymWorld」を公開し注目を集めたようです。現地バルセロナでの取材で、この「SymWorld」に最も驚かされたと語るのは、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。その簡便性は、モバイル版のAWSやGCPを連想させると評価し、「楽天シンフォニー」が楽天モバイルの大黒柱になる予感を抱いたと伝えています。
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楽天シンフォニーがAT&Tと協業──クラウド管理画面「SymWorld」の簡便性に驚く
今回のMWC取材で最も驚いたのが、楽天シンフォニーが公開した「SymWorld」だ。同社の完全仮想化ネットワークをPCのブラウザで管理画面にアクセスして操作することが可能というものだ。実際にイベントでは、PCからブラウザで、バルセロナからアクセスして、楽天モバイルのネットワーク管理画面につなぐというデモが行われた。
基地局の配置や電波の状況などが地図上で確認できる。ネットワークのパフォーマンスもモニターすることが可能だ。設備に異常があればブラウザ上から全体の構成から切り離すといったことができる。
ユーザーがTwitterで電波の不満を語っていることも把握できるし、その内容を他の部署にフィードバックすることもできる。ユーザーの契約情報を見たり、チャットサポートをするといったこともできる。携帯電話事業における、ネットワークや顧客管理など、あらゆる作業がブラウザ上で、しかも海外からもできてしまうのだ。
三木谷浩史会長が「楽天モバイルはアマゾンを目指す」といい、AWSの携帯電話ネットワーク版としてRCPなどを売り込もうとしているが、まさにSymWorldはAWSやGCPの管理画面を連想させるものであった。
以前、KDDIのネットワークセンターを訪れたとき、担当者が「かつて、ネットワーク機器の整備は職人技であったが、これらを可視化し、自動化してきた」と語っていたが、まさにネットワーク整備はクラウド化され、管理が一気にしやすくなった感がある。
楽天モバイルは、自社でイチからネットワークを構築してきたからこそ、シンプルで無駄のない完全仮想化ネットワークを構築できたのではないか。ドイツの新規参入事業者である1&1が興味を示し、パートナー契約を結ぶのは理解できたが、さらにアメリカの老舗キャリアであるAT&Tも楽天シンフォニーと業務契約を結ぶとは思わなかった。
AT&Tはマイクロソフト「Azure for Operators」で5Gネットワークを構築しつつ、さらに楽天シンフォニーと通信事業者向けネットワーク設計・構築ソリューションの強化をしてくるとは予想外であった。楽天シンフォニーとAT&Tは自社の技術を持ち寄り、今後新たな機能を開発し、モバイルネットワークの展開を簡素化、デジタル化、自動化するための新たなソリューションを提供していくという。
楽天シンフォニーのイベントでは登壇するメンバーはすべてグローバルな人材であり、三木谷会長もスピーチしたが、どちらかというと楽天シンフォニーのことはすべてタレック・アミン氏に一任している感であった。国内の通信事業である楽天モバイルから生まれた楽天シンフォニーであるが、将来的には楽天シンフォニーが楽天モバイルの事業を支える大黒柱になっていく気がしたのであった。
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image by:Sundry Photography/Shutterstock.com