面子を注意深く見てみると、「ロシア経済がマヒする」ほどのインパクトであることに気がつくでしょう。たとえば欧米日の主要自動車メーカーは、ロシアへの輸出を停止します(この一覧には入っていない日本の自動車メーカーも輸出停止を決めています)。
ロシア国内にもいくつか自動車メーカーはありますが、外国製部品なしには、生産ができないのです。
たとえばイケア。ロシアの大都市では、イケアがほとんど独占企業でした。日本には、ニトリなど元気な競合もありますが、ロシアではイケアの一人勝ち状態だったのです。そのイケアがロシアの全店舗を閉鎖する。閉店前に買えるものは買っておこうと、イケアには人が殺到しました。
私がモスクワに留学したのは1990年。ソ連最末期で、西側の製品は全然ありませんでした。自動車は全部国産、家電も国産。そして、それらの製品は、日本からだいたい30年ぐらい遅れているように見えた。
プーチンの愚かな決断は、ロシアをソ連時代に引き戻します。そして、体制自体もソ連に戻っている。ロシアでは今、「戦争反対」というと捕まります。「戦争」でなく、「特別軍事作戦」といわなければならない。もちろん「特別軍事作戦反対」といっても捕まります。
そして今、ロシアから芸能人、文化人が大挙して国外に脱出しています。ロシアからは、時々、富豪や有名人がいっせいに逃げ出すことがあります。
1917年のロシア革命後。1937年のスターリンによる大粛清時。1991年末のソ連崩壊後。そして、2022年のウクライナ侵攻後。「金があるやつは逃げろ!」という感じになっているのです。
プーチンの最悪の決断によって、ウクライナでは民間人が大量に亡くなっている。それだけでなく、プーチンの【戦略的敗北】によって、ロシアも地獄に連れていかれることになるのです。
(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2022年3月9日号より一部抜粋)
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