プーチン大統領の「今世紀最大の愚行」の決断は、自国民をも地獄に叩き落す事態を招くことは必至のようです。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストでロシアに在住経験を持つ北野幸伯さんが、現地の全国紙に掲載されたという「経済制裁に伴いロシアから撤退する企業のリスト」の一部を公開。誰もが知る大企業の業務停止はロシアをソ連時代に引き戻すことを意味するとし、ウクライナ侵攻を「プーチンの完全なる戦略的敗北」と斬って捨てています。
ロシアから撤退する企業リスト(ロシアはソ連時代に逆戻り)
私は前々から、ロシアがウクライナに侵攻すれば、「ロシアの【戦略的敗北は必至】という話をしています。
プーチンは2014年3月、ほぼ無血で、ウクライナからクリミアを奪った。これは、いうまでもなく、プーチンの【戦術的大勝利】です。しかし、その後の制裁で、ロシア経済はまったく成長しなくなった。
2000~08年、ロシアのGDPは、年平均7%の成長をつづけていました。07~08年、ロシア政府高官たちは、「ルーブルを世界通貨にする!」などと豪語していたものです。ところが、クリミアを併合し、制裁を科された2014年から2020年までのGDP成長率は、年平均0.38%。
プーチンが大統領になって22年の月日が流れました。人口1億4,600万人のロシアのGDPは、日本の3分の1程度。人口5,000万人の韓国よりも少ないという、悲惨な状況なのです。これが、【戦術的大勝利】がもたらした【戦略的敗北】です。
今回、ロシアは、ルガンスク、ドネツクの独立を承認し、ウクライナ全土を攻撃しています。プーチンの要求は、
- ウクライナがクリミアをロシア領と認めること
- ウクライナがルガンスク、ドネツクの独立を承認すること
- ウクライナの非軍事化
- ウクライナが中立国となり、NATOに加盟しない約束をすること
- ゼレンスキー大統領の辞任
などです。プーチンは、この目標を達成するかもしれませんし、達成できないかもしれません。いずれの場合も、地獄の制裁で、【戦略的敗北】は免れないのです。地獄の制裁といえば、侵攻から2日後の2月26日、「SWIFT」からの排除が決まったことは、プーチンの想定外だったでしょう。
そして、バイデンは、ロシア産エネルギーの輸入を禁止しました。時事3月9日。
<バイデン米大統領は8日、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの追加経済制裁として、ロシア産の原油や液化天然ガス(LNG)、石炭の輸入を禁止する大統領令に署名した。即日発効する。英国など同盟・パートナー国と共に、資源大国ロシアのエネルギー産業に最大級の圧力を加え、プーチン政権の弱体化を図ると表明した。>
これができるのは、アメリカがシェール革命で「世界一の産油国」「世界一の産ガス国」に浮上しているからでしょう。
では、ロシア産への依存度が高い欧州は、どうするのでしょうか?天然ガスのロシアからの輸入量を、年末までに6割削減するそうです(時事3月9日)。そして、カナダ、イギリスも、ロシア産原油、石油製品の輸入を停止します。