さらに驚いたのは、日米同盟とは決してイコールパートナーではない。日本は米国の従属国であるという事実です。なんとなくわかってはいましたが、改めて明確に説明されると驚きました。
著者がアメリカの米軍関係者から教えてもらったことでは、日本では評価の高い中曽根総理は「ロンヤスの関係」「日米はイコールパートナー」などと発言していましたが、アメリカの評価は中曽根総理はアメリカに守られている従属国という日本の立場がわかっていないのではないかと、不評だったというのです。
逆に小泉総理や安倍総理は日本の従属国であるという立場を理解したうえで、うまくアメリカを持ち上げて利用したしたたかな政治家と評価されているというのです。
例えば、小泉総理は北朝鮮から拉致被害者の一部帰国を実現しましたが、万が一のときにはアメリカが爆撃するというところまでアメリカ政府が支援していたのです。
さらに変わり者のトランプ大統領から信頼された安倍首相は、したたか、かつ偉大な政治家であったということなのでしょう。
Japan-US Alliance、日米同盟…アメリカの政治家や軍幹部たちが使うAllianceっていう言葉は、従属国っていう意味合いが含まれているんだよ(p78)
この本で語られるのは、アメリカ、イギリス、ロシア、インド、中国の国際政治、インテリジェンス業界での存在感に比べ、日本の存在感がほどんとないということです。著者はこれまでの経験の中で、米英、米中、米ロ、米印の関係がいかに深く、人材が厚いのか、思い知らされてきました。
そうした国家群にくらべて、日本では国会議員やスタッフが安全保障について、基本的なことから肝心なことまで、まったく知らないという体たらくです。世界には日本とまったく違う価値観で生きている人たちがいる、という著者の言葉が、今回のロシアのウクライナ侵攻を見て納得しました。これまでは憲法改正、自衛力強化、核兵器などはタブー視されてきましたが、やっと普通の議論ができる環境ができてきたということでしょう。
最後に著者の推奨は、習近平に学ぶことです。いくら国際社会から批判されても、スパイが何名捕まろうと、工作活動、サイバー攻撃、軍備拡張をやめない。国民全員をスパイにしてまで中国の夢、国家目標、国益を達成するために、必死に行動しているのです。日本も国際社会のリアリズムに目覚めないとウクライナのようになってしまうかもしれないと感じさせてくれる一冊でした。
渡部さん、江崎さん、良い本をありがとうございました。
【私の評価】★★★★★(93点)
<私の評価:人生変える度>
★★★★★(お薦めです!ひざまずいて読むべし)
★★★★☆(買いましょう。素晴らしい本です)
★★★☆☆(社会人として読むべき一冊です)
★★☆☆☆(時間とお金に余裕があればぜひ)
★☆☆☆☆(人によっては価値を見い出すかもしれません)
☆☆☆☆☆(こういうお勧めできない本は掲載しません)
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