世界中の人がコロナ禍で気づいてしまった「流行なんていらない」という真実

 

3.同じものを使い続けるスタイル

現在のアパレル市場を見ると、全てのアパレル製品はファッション化し、常に新たな流行を追いかけているように見える。しかし、ファッション化する以前にもアパレル製品は存在していた。

1960年代までは、世界的にオーダーメイドが主流だった。男性はテーラーで背広を仕立て、女性は百貨店、洋装店でよそいきの服をオーダーした。普段着は自分でミシンを踏んで洋裁する人も多かった。オーダーメイドでは、制作者と着用者が話し合って生地やデザインを決めるので、流行よりも顧客の嗜好の方が優先された。自分の好きな色、自分の好きな素材、自分の好きなデザインを持っていた人も多かったのだ。

現在は、何も考えなくても、店頭に服が大量に並んでいる。そのほとんどはトレンドに沿った商品であり、消費者はそれを選べば良い。簡単に流行の服が手に入るし、周囲から浮かび上がることもない。

しかし、オーダーメイドの場合は、制作者のセンスと本人のセンスが問われる。最新の流行にいち早く飛びつく人は少ないし、多くの人はオーソドックスなデザインを選んでいたのだ。

男性に至っては、常に同じメーカーの生地を選び、年に数着のスーツをオーダーし、シャツは1ダース単位でオーダーする人も多かった。つまり、デザインの変化を求める人は少なかったのだ。

これは家具や照明器具、食器等と同様であり、壊れたら同じデザインのものを買い換える。老舗のメーカーは、変わることなく同じデザインの商品を作り続けることが求められたのである。

同じデザインのモノを使い続けるスタイルがあれば、メーカーも継続可能なビジネスが可能になる。オーダーメイドであれば、余剰な商品を作ることもないし、商品を廃棄する必要もない。まさに、サスティナブルな社会が実現するのだ。

4.グローバリストの発想

オーダーメイドの時代、あるいは、同じモノを使い続ける時代には、現代の社会課題は希薄であった。貧困の問題、貧富の格差、人権弾圧、環境破壊、水や空気の汚染等々。

これらは大量生産と市場競争から始まった。大量生産すれば安い商品が大量に生産できる。資本力のあるメーカーは大量生産のための設備投資をして、大規模工場を建設する。その結果、規模の小さいメーカーは価格競争に破れ、淘汰された。

大量生産した商品は大量販売しなければならない。資本力のある企業が、規格化された店舗を多店舗化するチェーンストアを展開し、発展した。その裏側で規模の小さな商店、卸商は淘汰された。

価格競争は果てしなく、常に人件費の低い国に工場を移転する。工場が建設されれば、その国の所得が上がり、新たな市場が形成される。

その裏側で、自給自足で自立していた地域も貨幣経済に浸食され、現金収入がなければ暮らせない社会が出来上がってしまう。その結果、現金収入を得るために工場や商店で働くようになる。こうして貧富の格差が拡大していく。

最初は、規模の小さな商店から始まるが、市場が成長した段階でグローバルな流通企業が市場を独占していく。

グローバル経済が目指すのは、資本力ある少数の人間が世界の経済をコントロールすることに他ならない。

グローバルファッションとは、世界のアパレル市場を均一の市場に変え、それを共通のトレンド情報でコントロールし、世界的規模の少数の企業が世界市場を制覇することである。

グローバリストにとって、民族衣裳、国や地域に固有の宗教や文化は邪魔な存在だ。国境がなくなり、世界が一つになること。美しい言葉だが、これが格差を招き、環境や人権を侵害することにつながる元凶である。

SDGsとは、行き過ぎたグローバリズムに対する国連の警鐘とも言えよう。

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