世界中の人がコロナ禍で気づいてしまった「流行なんていらない」という真実

 

5.流行なんていらない

コロナ禍で世界のサプライチェーンが止まり、市場が止まった。物流が止まり、展示会が中止になり、グローバル経済が止まった。

その中で多くの人が多くのことに気がついた。惰性のように購入していたファッション商品は本当に必要なのか。1シーズン新しい服を買わなくても困らなかったではないか。

1シーズン買わなくて困らないなら、数年間は困らないのかもしれない。

外出せずに、家で自粛していると、家の中の不要なモノが見えてくる。こんなに大量のモノが必要なのか。断捨離してシンプルな生活を取り戻したいと思った人も少なくないだろう。

クローゼットには、着用しない服があふれている。「昔はこんなデザインが流行っていたけど、今は着れないな」「そもそも流行があるからモノが増えるんじゃないか」と思う。

最早、ファッションに対する憧れは消えた。むしろ、ファッションなんて必要ないと考える人が増えている。

ファッションとは変化である。「変化をビジネスにする」ことが本質であって、「商品を変化させる」ことではない。時代が変化しないことを求めるならば、変化しない商品を提案すべきだろう。

実は、コロナでグローバリズムは終焉しようとしている。グローバルなサプライチェーンも崩壊し、ファストファッションも成立しない時代である。ファッションはもっとローカルになり、個人的になっていく。大量生産大量販売も終わり、少量生産少量販売に変わっていく。

そして、変化ではなく、変わらないことを訴求するブランドが増えていくだろう。例えば、シャツとパンツだけのブランド。あるいは、カットソーだけのブランド。アイテムもデザインも変わらない。色とワンポイントの柄だけ変わる。

あるいは、生地と色は変わらないけど、ボタンとポケットだけ変わる。

あるいは、白シャツだけのブランド。着なくなったら、下取りを保証するブランド。そして、リメイクして再販する。

それらをオーダーメイドで作る。当然高くなるが、高い商品を作ることは、資源の有効活用とも言える。安い服を大量に作ることは、大量の資源を使って少ない経済活動をすることだ。少量の資源で大きな経済活動をするなら、高い方が地球にも人にも優しい。

もしも、白シャツだけでは売上が取れないならば、「白シャツカフェ」を併設する。スタッフも白シャツ、顧客も白シャツ。有名人が来店したら白シャツにサインしてもらう。それを数十万円で販売してもいい。

チャクリティで白シャツサイン会を行ってもいいかもしれない。

そもそも、これまでのファッションビジネスが安易だった。マニュアル通りに運営すれば利益が出たのだ。そのシステムが崩壊した。

既存の制度が壊れてこそ、新しい動きが出てくる。流行がなかった時代に戻ってもいいし、不変であることを訴求してもいい。

「流行を追いかけない」「流行なんて必要ない」というブランドが流行するんだろうけど、まぁ、それはよしとしましょう。

編集後記「締めの都々逸」

普通でよいと 斜に構えても それがトレンド ノームコア

一時期、究極の普通「ノームコア」が流行りましたが、長続きしませんでした。それはそうですよね。普通という定義はとても難しい。というか、何も言っていない。

「無印良品」も、ブランドを否定したブランドになりました。

アンチファッション的なコンセプトは、これまでも何度も出現しています。でも、結局ファッションのテーマなんです。

本当のアンチファッションは、全てオーダーメイドで服を作る人ではないか、と思います。その人が流行を追いかけずに、同じ服を着続ければ、それがアンチファッションになります。

そして、一人一人が大量生産の商品を否定すれば、グローバリズムも関係ないし、国産の商品を選べば日本の景気も良くなります。

日本では数十年間、安物を追求するという社会実験をしてきました。既に、その結果は出ています。日本は貧しくなり、中国が力を付けた。だから、この実験は終わりにしましょう。

これは簡単に実現しますよ。自分が海外生産の安物を選ばなければいいんです。それだけです。(坂口昌章)

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image by: Shutterstock.com

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