四面楚歌の文在寅。退任後の自分を守る「防弾人事」が不発で窮地に

 

しかし、文政権の思い通りにはいかない。引き継ぎ委の業務報告を行った監査院は「過去の前例に照らしてみれば、新政権が提案するのが適切だ」という立場を明らかにした。このような立場は崔載海院長の承認があってのこと。

憲法第98条3項の監査委員は、監査院長の推薦がなければ大統領が任命できないため、監査院がこのような立場を示したことは、文大統領の推薦人事は無視できるという意味だ。文大統領にとっては、「飼い犬に手を噛まれた」格好だ。

監査院内部の公務員の雰囲気も落ち着かない。文政権5年間、人事の停滞が深刻で、職員専用の書き込み欄をしばらく閉めるほど内部でも不満が高まっていたという。中央選管約2900人の職員が声をひとつにして、趙海柱(チョ・ヘジュ)前常任委員の選管委員任命に反対したように、これまで声を出さなかった公職社会の反乱が始まっている。

検察はさらに早く横になった。尹次期大統領の後任として検察総長に任命された金五洙(キム・オス)総長の変身は驚くほどだ。任期を1年以上残した金総長は「尹核官(ユンヘッカン=尹の最側近)」の辞退要求を一蹴しながらも法務部長官の捜査指揮権廃止、検察の独自予算編成権など尹次期大統領の公約を支持している(それが自分にとっても都合がいいからだけれど)。

3年間にわたり捜査を行わなかった産業部(省)のブラックリスト事件についても捜査に着手し、朴元淳(パク・ウォンスン)前ソウル市長の性的嫌がらせ被害者に2回目の加害をしたチン・ヘウォン検事に対する懲戒も決まった。おそらく李在明(イ・ジェミョン)前候補が当選していたら消えてしまっていた事件だ。金ヘギョン(李在明の妻)氏の法人カード使用についても、京畿道監査官が大統領選挙が終わると、京畿南部警察署に捜査を要請した。

3年前、チョ・グク前長官の捜査の時も特にブレーキをかけなかった大統領府が、蔚山(ウルサン)市長選挙介入事件を蔚山地検からソウル中央地検に持ってきた時最も憤ったという。宋哲鎬(ソン・チョルホ)蔚山市長当選を助けるために、大統領府の8人の秘書官が動員されたほどだったが、予想される波紋を文大統領も当然知っていたはずだ。弁護士なのだから。宋哲鎬は当選し文も喜んだ。宋哲鎬と文は無二の親友だった。

検察、監査院、警察は、いかなる防弾装置をやってもすでに文大統領の味方ではない。この5年間権力の圧力で十分に明らかにできなかったことも、徐々に明らかになるだろう。与党関係者が大挙関与したといううわさがあるライム、オプティマスファンド詐欺事件、文大統領の娘婿に特恵を与えたイースター航空事件も再捜査の兆しが現われている。

尹次期大統領が文大統領に配慮して(捜査しないよう)圧力をかけるなら、これも後日の積弊になる恐れがあり、下手に介入することもできない。文大統領は釘を打っておこう(防弾人事)と、もがいているが「真実の時間」は避けられない。全ての不正や悪事が白日の下に晒されるのは、今や時間の問題だ。

image by: Sagase48 / Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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