長期政権を確実のものとするため、台湾併合を企図していると言われる中国の習近平国家主席。ロシアによるウクライナ侵略を受け、世界各国から「力による現状変更」に対する猛批判が沸き起こっている状況下にあっても、その意思に変化はないのでしょうか。今回のメルマガ『浜田かずゆきの『ぶっちゃけ話はここだけで』』では国際政治経済学者の浜田和幸さんが、ロシアによる軍事行動と、それに伴う各国の動きが習近平政権に与えた影響を分析・紹介。その上で、中国による台湾侵攻の可能性についての見立てを記しています。
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ウクライナ危機を見て防衛意識を高める台湾
中国の新駐米大使である秦剛(Qin Gang)氏は「戦う狼外交官」とも呼ばれていますが、現在進行形のウクライナ危機に関して、「もしロシアの動きを事前に把握していれば、危機を回避するために、できる限りのことをした」と発言しています。
とはいえ、この“後出し”発言には疑問を呈せざるを得ません。
なぜなら、中国はアメリカからの情報を事前に得ていたはずで、しかも、アメリカの諜報機関によれば、中国はそうした情報をロシアに提供していたとされるからです。
アメリカに言わせれば、「中国はアメリカ発の極秘情報をロシアに横流ししていた」となります。
真相はやぶの中ですが、ウクライナ危機によって「台湾有事の可能性が高まった」という観測が専らですが、実際はその逆ではないかと思われます。
というのも、今回のウクライナ危機に際し、7割以上の台湾人は「中国との戦争になれば、台湾を守るために立ち上がる」と回答しているからです。
昨年12月の時点では40%でしたが、倍近く伸びています。
要は、台湾はウクライナのロシアへの抵抗に勇気付けられているのでしょう。
蔡英文総統は兵役義務の強化策を打ち出しましたが、賛成する声が圧倒的です。
ウクライナによるゲリラ的抵抗、それを可能にしているNATOからの武器供与(スティンガー、ジャベリン対戦車ミサイル、TB2ドローン)の有効性も明らかになってきました。
アメリカはじめヨーロッパ各国や日本からのウクライナへの資金援助も急増しています。
その意味で、台湾ではアメリカへの期待が高まる一方です。
ポンペオ元国務長官を始め米政府の要職経験者や議員も相次いで台湾を訪問しています。
ゼレンスキー大統領は日本の国会に向けてオンライン演説を行い、岸田政権からの追加支援を確実にしました。
実は、ウクライナは中国と台湾の双方と緊密な関係を保っています。
そのため、蔡英文総統も閣僚も1か月分の給与をウクライナへの支援に供出しました。
また、台湾はロシアへの経済制裁も強化しています。
そうした動きを見据え、中国はロシアに対し、距離を置き始めました。
具体的には、アジアインフラ投資銀行(AIIB)はロシアへのローンを中止し、中国はロシアが求める航空機の部品提供を断ったほどです。
ロシアの通貨ルーブルは30%も下落しました。
ロシアがウクライナを短期決戦で押さえていればまだしも、現状では中国としては国際社会を敵に回しかねないロシアとの関係強化は難しくなっています。
そうした環境下では中国による台湾への軍事侵攻の可能性は大きく低下したと言えるでしょう。
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image by: JENG BO YUAN / Shutterstock.com