病気治療のための食事療法も、正しく実践しなければかえって体によくないことが起こる可能性があります。糖尿病と診断され、糖質制限始めてから体重が大きく減ってしまった読者からの質問に、メルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』著者で、糖質制限の提唱者としても知られる医師の江部康二先生が答えます。先生は、糖質を制限するときに脂肪も制限してしまう人が多く、低カロリーで痩せてしまう人がいるとズバリ。カロリー不足にならないようにするのが、糖質制限食十箇条の第一であると伝えています。
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糖質制限で低血糖?
Question
58歳男性。3年前に境界型糖尿病と診断され、以来糖質制限を実践しています。自分で30gブドウ糖負荷試験をしますと、血糖値が1.5時間後にピークとなり、ちょうど90mg/dl上昇しますので完全に2型糖尿病だと思います。
ここのところ、食後血糖値ピーク値110~120mg/dlになった後、1時間あたり5mg/dlの率で低下していき、60mg/dl程度まで下がるようになってしまっています。体重はかなり落ちて、身長175cmで体重は53kgほどです。
毎日の摂取カロリーは1500~1800KCalくらい、総糖質摂取量は20~40g程度をキープしています。こんなに血糖値が下がると不安になります。このまま糖質制限を続けて大丈夫でしょうか?
江部先生からの回答
「身長175cm。体重53kg」ならBMIは17.3であり、明らかに痩せすぎです。糖質制限食導入時に、脂肪の摂取も制限してしまい、結果として低カロリーになり痩せすぎる人がいます。
「糖尿病、HbA1cは良くなったけれど、ヘロヘロで力が入らない」といったパターンです。皆様も体力の低下はないでしょうか?まずは、厚生労働省のいう「推定エネルギー必要量」を確保することが優先順位の第1位ですが。58歳男性なら、ほとんど運動しない人でも「2100kcal/日」必要です。
摂取カロリーが、1500~1800kcal/日というのは、明らかに摂取エネルギー不足です。カロリー制限食を長期に続けると筋力低下や骨粗鬆症のリスクとなります。動物性脂肪をしっかり食べて、摂取カロリーを増やすことが急務です。
糖質制限食十箇条の第一に、「魚貝・肉・卵・豆腐・納豆・チーズなどタンパク質や脂質が主成分の食品はしっかり食べる」とあります。これは、糖質を制限した分のカロリーは、脂質・たんぱく質を充分量摂取して補いカロリー不足にならないようにするという意味です。
血糖60mg/dlでも、低血糖症状がなければ、問題なしですが、ここまで下がるのは、摂取エネルギー不足による影響が大きいと思います。摂取エネルギーを増やせば、血糖値60mgまで下がることはなくなると思います。
1gの糖質が3mg血糖値を上昇させているので、2型糖尿病の可能性が高いです。従って、このままスーパー糖質制限食を継続して、「食後高血糖」「平均血糖変動幅増大」という酸化ストレスリスクをなくし、糖尿病合併症を予防することがとても大事です。
美味しく楽しく、そして充分なエネルギーを摂取して、糖質制限食を末長くお続けください。
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