3月9日に行われた韓国大統領選に勝利し、5月10日に新大統領に就任する尹錫悦(ユン・ソンヨル)氏。そんなユン氏は「私は国民の下僕」という言葉をよく口にするといいます。かなり自分のことを下にした言い方ですが、韓国の国民はどう感じているのでしょうか。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、 その言葉について語っています。
大統領は下男
尹錫悦(ユン・ソンヨル)次期大統領は「私は国民の下僕」という言葉をよく口にする。選挙運動の時だけではない。4日の「引継ぎ委」会議でも同様の発言をした。
この言葉を聞くと、5年前の文在寅政府発足の初期が思い出される。当時、大統領府の要職に入ったある人物は、私的な席でこのように述べた。「ここへ来てみると、なかなか馬鹿になれません」。大統領府には毎朝、大韓民国の重要情報が集まる。夜中に北朝鮮特異動向から国際社会問題、与野党政界の動き、国内外の各種経済指標や企業動向まで報告される。
各機関から提出される報告書は、諸々の懸案から示唆点、対応案まで整理されて出てくる。彼は「毎日こうして報告を受けていると、いくら頭が悪い人でも賢くなるしかない」と話したわけだ。
知らないことがなくて何でもできる力まで身につければ、そこからは独善(独裁、傲慢)が始まる。5年政権の目で世の中を裁断し、5年政権ができない、またはしてはいけないことをやってしまう。
文在寅政府は市場までめちゃくちゃにした。「不動産だけは自信がある」と23回にわたって対策を出したが、いずれも失敗した。国のエネルギー政策の大計も揺さぶった。韓電の負債だけを残し脱原発の失敗を認めた。誰も知らないうちに蔚山市長選挙に介入できる(文在寅の友を政府の圧力で市長にした)と思っていたが、ばればれだ。
どの政権であれ、情報と権力の大統領府への集中は避けがたい。「帝王的大統領制」と呼ばれる韓国憲法ではなおさらだ。だから情報と権力を扱う人の態度が重要となる。政権の成否を分ける地点だ。
尹錫悦政府は、文在寅政府を反面教師にしなければならない。そのため組閣に劣らず大統領秘書室の人選が重要だ。新しい大統領の参謀たちのためになる話を李明博元大統領の秘書室長を務めた任太熙(イム・テヒ)元議員に聞いた。
イム元議員は「大統領は全国民の中で乙の中の乙だ。そこからすべてを始めなければならない」と言った。甲に対する乙、つまり上下関係で言えば「下」の位置。とすれば大統領を補佐する青瓦台秘書らは「スーパー乙」にならなければならない。尹次期大統領の「下男論」と一脈相通じる(尹錫悦はいつも大統領は国民のための下男だと言っている)。









