常任理事国で拒否権を持つロシアによる侵略行為に対し、国連は有効な制御手段を持っていません。経済制裁の決議でも193カ国中141カ国の賛成は大多数ではありますが、52カ国が同意していないという重い事実もあります。今回のメルマガ『石川ともひろの永田町早読み!』では、著者で小沢一郎氏の秘書を長く務めた元衆議院議員の石川知裕さんが、棄権した国を地域別に列挙。中でも日本との関わりが深く、巨大な人口を抱える中国、インドの立場の難しさを伝え、現在の世界情勢が先の大戦前と同様に複雑になっていると指摘しています。
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ロシア連合はできるのか/ウクライナ戦争で見えた複雑怪奇な国際関係
連合国と枢軸国。戦前の世界大戦の枠組みである。日本、ドイツ、イタリアの三国軍事同盟と、アメリカ、イギリス、ソ連の連合国が覇権を争う構図であったが、ソ連とドイツは不可侵条約、ソ連と日本も中立条約を結ぶという複雑怪奇な面もあった。
第2次世界大戦後は米ソの冷戦が長く続き、2000年以降は米中の覇権争いがアフリカ、アジア、南太平洋の諸国で行われていた。
今回のウクライナ紛争は新たな国際的枠組みの形成を予感させる。国連の経済制裁の決議の結果を見てみよう。193カ国中、賛成は141カ国もある。世界の大勢はウクライナへの侵略を許していない。では残りの国はどういう国だろうか。
まず明確に反対を表明したのは、ベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、シリア、そしてロシアの計5カ国だ。完全な独裁国家がずらりと並ぶ。注目したいのは棄権した国家だ。ロシアに気を遣う必要がある国である。地域別に見てみる。
【アジア】
バングラデシュ、中国、インド、カザフスタン、キルギスタン、ラオス、モンゴル、パキスタン、スリランカ、タジキスタン、ベトナム
【アフリカ】
アルジェリア、アンゴラ、ブルンジ、中央アフリカ、コンゴ、赤道ギニア、マダガスカル、マリ、モザンビーク、ナミビア、ニカラグア、セネガル、南アフリカ、南スーダン、スーダン、ウガンダ、タンザニア、ジンバブエ
【中南米、中東、欧州など】
アルメニア、ボリビア、ブルンジ、キューバ、エル・サルバドル、インド、イラン、イラク、ニカラグア
賛成も反対も棄権もしなかったのは、
アゼルバイジャン、ブルキナファソ、エスワティニ、エチオピア、ギニア、ギニア・ビサウ、モロッコ、トーゴ、トルクメニスタン、ウズベキスタン、ベネズエラである。
中国もロシアも、アジア、アフリカ、中東など発展途上国への支援を通じて自国の味方を増やしている。
第1次世界大戦も第2次世界大戦も、経済的な連携を通じて枠組みが形成される。日本が経済制裁を課してもロシアが困らない理由は、そもそも貿易量が少ないからだ。ロシアはクリミア併合後に経済制裁に耐えられる準備を進めてきている。ロシアは米ドルへの依存を弱めるために、ドル建てで保有する外貨の比率を減らし、金や中国人民元で保有を進めてきたと言われている。
そして、中国とロシアは貿易面でエネルギーと穀物でお互いの相互依存度が高いので、経済制裁を簡単にできない関係にある。ただし、中国は日本やアメリカと貿易が多いのでロシアを擁護しすぎると経済制裁の巻き添えになることを懸念している。
成長著しいインドは、ロシアからの武器の提供を受けており簡単に米欧の主張に同調できない。しかし、中国とは緊張関係にある。
第2次世界大戦時も、冒頭に指摘したように連合国と枢軸国に分かれながらも不可侵条約を結ぶなど複雑怪奇な国際関係だった。今後の世界情勢は、米英仏日独伊加のG7と中ロによる対立が深まるだろう。
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