弱体化する米軍。バイデン「安全保障に最大の投資」は大嘘?問題だらけの国防予算

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今回は、3月にアメリカのバイデン大統領が提出した予算教書の国防予算案が、今世界が直面している問題から見て相応しいものかどうか、というお話をしたいと思います。

バイデン大統領が提出した予算教書

3月28日に、バイデン大統領が2023年度の予算教書を議会に提出しました。富裕層への増税や、財政赤字の減少など、いくつかポイントはありましたが、今回注目したいのは国防予算です。

トータルで年間8,130億ドル、昨年度比でプラス4%ということで、日本ではこの4%の増額と、バイデン大統領が、「安全保障に歴史上最大級の投資を行う」と強調したことを受けて好意的な報道が多い様ですが、中身をよく見てみると実は幾つか問題があることがわかります。

総額8,130億ドルの実態

まず総額の8,130億ドルですが、4%の増額だと言っていながら、インフレ調整後で見てみるとその増額率はわずか1.5%です。

そして、対GDP比でみると、2022年度はGDPの3.2%だったのに対し、2023年度は3.1%と言うことで減少しており、これは、冷戦後ではクリントン政権に次ぐ最低レベルとなります。

GDP比はあくまでも目安ではありますが、バイデン大統領が言うような、安全保障への歴史上最大級の投資、と強調できるレベルにはなく、寧ろ、ウクライナ危機によってこれだけ危機的な世界情勢であると思い知らされても、足踏み状態でなかなか増額することが出来ない、と見た方が正しいと思います。

次にその中身ですが、グアム島のミサイル防衛や宇宙防衛、そしてAIや5Gへの研究開発など、5年10年以上先に起こるであろう未来への投資に大きな予算を付けているものとなっていますが、今日目の前に存在する危機、つまり数年内に発生しかねない危機に対する「現存戦力の強化」、への予算が大きく制約を受ける内容となっています。

陸海空軍別に見ると

陸海空軍別に見ていくと、まず陸軍ですが、欧州では、NATOのよりロシアに近い東側諸国、バルト三国やポーランドなどで兵力を増強する必要が発生すると見られますが、陸軍の予算は1,775億ドルで、前年の1,747億ドルから少し増えている様に見えていますがインフレ調整後では減額となります。

そして兵員数も、これは予算だけの問題ではありませんが、48万5000人から47万3000人にと、減少する方向です。

次に海軍ですが、艦艇保有数で中国に大きく水を空けられ、中国との紛争が発生した場合は500隻の艦艇が必要だと言われている中、現在298隻を保有する海軍の艦艇購入予算はわずか9隻分である一方で、24隻が退役予定であり、艦艇数は大きく減少の方向に向かいます。

そして空軍ですが、今後ますます高度化する防空システムに対抗していくために、最新鋭の航空機を常に入れ替えていく必要がありますが、ただでさえ、第2次世界大戦後、最もアメリカ空軍の体制が整っていないと言われている中で、最新鋭機であるF35の購入数量は、ここ数年要求して来た48機から33機に減少しており、こちらも強化ではなく、弱体化の方向に向かっています。

このほかにも、未だ必要とされるミサイル開発計画の中止や、補充のない必要航空機の退役など、アメリカの軍事力の低下が懸念される事象が、この期に及んで現バイデン政権で継続しています。

最後に

ロシアや中国など、世界の独裁主義者が他国領土を侵食する状態を招いた要因の一つは、確実にアメリカの軍事力の低下があります。

時代が変化し、アメリカ国内でも、海外の紛争に自国民の生命や財産を犠牲にしてまで関与するべきでない、という意見が主流となりつつあることは百も承知しながらも、本当のアメリカの国益を考える場合、今、世界の独裁主義者達に付け入る隙を与えるべきかどうか、と、ウクライナの惨劇を見て思わずにはいられません。

出典:メルマガ【今アメリカで起こっている話題を紹介】欧米ビジネス政治経済研究所

image by:BiksuTong / Shutterstock.com

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