プーチン“自作自演”。ロシアの「ルーブル」が持ち直したカラクリを暴く

 

なぜ、ルーブルは上がったのか?

では、なぜ紙切れルーブルは上がったのか?これは、ロシア政府とロシア中銀が、「上げた」のです。

どうやって?

ロシア最大のお得意は、欧州です。欧州は、すでにロシアからの石炭輸入を、8月から停止することを決めています。そして、年内には石油輸入を全面的にストップする方針を打ち出しています。

しかし、現状欧州は、ロシアから石油、石炭、天然ガスを輸入しているのです。その代金は、ガスプロムバンクにドル、ユーロで入金されます。ガスプロムバンクは、欧州からエネルギー代金のドル、ユーロを受け取ったら、即座に【ルーブルを買う】のです。

なぜ?

ロシア中銀が、そう決めたからです。つまり、ルーブルが上がっているのは、【強制的に需要を作り出しているから】なのです。だから、ルーブルが上がっているのを見て、

「フォローザマネー。お金の流れはウソをつかない。ロシアが勝っているから、ルーブルは上がるのだ」

というのは、今のロシアのケースには、あてはまりません。

制裁の効果は、長期で見る必要がある

ロシアの友人、知人に、「制裁どう?」と尋ねることがよくあります。答えはいつも同じで、「インフレがすごい」です。ロシア連邦統計局の発表によると、今年3月のインフレ率は、前年同月比で16.7%だそうです。びっくりの数字ですが、「壊滅的打撃」とはいえないでしょう。

しかし、制裁の効果は、長期で見る必要があります。たとえば、2014年のクリミア併合後の制裁は、今年の制裁よりずっと緩いものでした。しかし、2014年から2020年のGDP成長率は、年平均たったの0.38%です。

ちなみにロシアは、2000年から08年まで、年平均7%の成長率を誇る、急成長国家でした。それが、クリミア併合後、まったく成長しなくなった。2014年、ロシア国民は、「制裁なんて効かないね!」と笑っていました。ところが、実際は、「ものすごく効いていた」のです。

今回の制裁は、2014年とは比較にならないほど厳しいものです。世銀によると、2022年のロシア経済は、マイナス11%だそうです。しかも、プーチンがトップの間、制裁が解除される可能性は低い。つまり、ロシア経済は、「瀕死の状態」が「長期間つづく」のです。

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