制裁下のロシアをイメージしてみよう
私の知人は、スズキの車に乗っています。故障したので、修理に出そうとしたら、「修理は無理です。部品が入ってこないので」といわれました。どうするのでしょうか?廃車にするのでしょうか?
日米欧の自動車メーカーは、ロシアへの輸出と現地生産を停止しました。部品もです。ロシア人は、日本車、ドイツ車が大好きですが、もう日本車、ドイツ車を買うことはできません。すでに日本車、ドイツ車に乗っている人はどうでしょうか?故障したらそこまでです。
ロシアの自動車メーカーもあります。AVTOVAZ、GAZ、UAZ、KAMAZなど。しかし、これらの会社は、輸入部品を使っているので、生産できなくなります。
飛行機は、どうでしょうか?ロシアが使っているのは、ほとんどボーイングとエアバスです。ロシアは、リース契約していた飛行機の返還を求められ、堂々と盗むことにしました。しかし、故障したらそこまでです。部品がないのですから。
どうでしょう?「制裁は長期で見なければいけない」の意味、ご理解いただけるでしょう。今の経済はグローバル化が進んでいて、「輸入品がなくなってもやっていける国」はありません。あるとしたら北朝鮮ぐらいでしょう。救いは、中国、インドが、これまでどおり貿易をつづけていることです。
とはいえ、アメリカは、世界GDPの約24%を占めている。EUは約18%、日本は約6%、イギリス約3%、カナダ約2%。合わせると、世界GDPの53%。つまり世界GDPの半分以上が、ロシアとの取引を拒否している。
一方、中国は約18%、インドは約3%です。確かに、ないよりはだいぶマシですが、「53%の取引先を実質失った」ロシアの悲惨さ、商売をしている人なら、理解できるでしょう。
というわけで、「ルーブルが戻したからロシアが勝った」という話にはなりません。
ロシアは、ウクライナとの戦闘に勝つかもしれませんし、負けるかもしれません。戦闘に勝つことができても、「地獄の制裁」はつづいていきます。だから、私は、ウクライナ侵攻がはじまる前から書いていたのです。ロシアがウクライナに侵攻すれば、【戦略的敗北】は不可避であると。予想通りの展開になっています。
(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2022年5月7日号より一部抜粋)
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