教職員23人が給与未払いでストライキ。和歌山南陵高校で授業拒否、補助金私的流用の疑いも?創立者はあの井脇ノブ子氏

2022.05.12
by たいらひとし
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和歌山県日高川町にある私立高校で、給料の未払いなどを理由に教職員が11日から3日間のストライキに入り、授業が行われない異例の事態となっている。少子化などの影響で私立高校が厳しい経営に立たされていることが背景にあるが、一方で不明瞭な学校経営が問題だと指摘する声もある。創立者は「やる気・元気・いわき」で知られる、元衆議院議員の井脇ノブ子氏だ。

給料の未払いだけじゃない、南陵高校疑惑の数々

5月11日和歌山県日高川町にある和歌山南陵高校によると、教職員約20人の4月分の給料が未払いとなり、経営側に説明を求めても解答が得られず、校長を除く全教職員23人が11日から3日間のストライキに入ったという。読売新聞などが報じた。

そのため、授業が行うことができず、生徒たちは午前を自習に、午後をクラブ活動に変更せざるをえない異常事態となったが、給料未払いなどについての説明を受けられる確約を経営側から得たとして、12日から授業は再開されているという。

南陵高校は4月にも高校への授業料を国が補助する「就学支援金」を法人側が受け取ったにも関わらず、本来保護者に返すべき授業料計2,000万円を支払っていないことがあきらかになり、和歌山県から指導を受けたばかり。

また、9日にはガス料金が未払いのため、ガスの使用がストップするという、信じがたいことまで起きた。その後、ガス代は支払われ、再び使用できるようになったという。

教職員側はそれぞれの金銭問題に関して、保護者や教職員に向けて説明会を開くように、再三要求したものの、保護者側への説明会の日程を提示しなかったため、やむをえずストに踏み切った。

和歌山南陵高校はかねてから経営難に立たされており、3学年で360人の定員のところ、半分以下の167人しかいない。

静岡県にある姉妹校・菊川南陵高校は2020年の入学者が定員160人に対し、18人だったことが分かり、2021年の生徒募集停止を発表。同年4月1日に休校となり、在籍した生徒は和歌山南陵高校に籍を移している。

私立高校の教職員の給与は、生徒の授業料と生徒数に応じて、各都道府県が出す私学助成金から支給されており、収入に見合う人員配置をすれば、給料の未払いなどのトラブルは起きないはずだと言われている。

南陵高校の経営陣はかねてより補助金の私的流用の疑惑があり、2018年には菊川南陵高校の当時の校長が理事長・学園長の夫婦が経営母体の産業廃棄物会社の預金口座に約2,000万円を振り込んだと告発している。

のちに容疑が不十分であり不起訴となったものの、この告発がきっかけとなり、生徒数が激減したものと思われる。

ちなみに、南陵高校の前身は和歌山国際海洋高等学校で、「やる気・元気・いわき」で知られる、元衆議院議員の井脇ノブ子氏が創立者(2010年に理事長及び校長を退任)。

創立時に住宅金融公庫や日本私立学校振興・共済事業団などから約8億円以上の借り入れがありながら、生徒数の減少を理由に返済不能となり、数々の訴訟事件に発展している。

岐路に立つ私立高校の存在

平成31年度の日本私立学校振興・共済事業団の調査によると、入学定員未充足の私立高校の割合は71.6%で、年々定員割れが増加傾向にある。

南陵高校のように悪評によって極端に定員割れするケースは少ないだろうが、どの私立高校も経営難に陥っても不思議ではない現状がある。

生徒の数が少なくなると教職員の人数も減らさずを得なくなり、その負担は残った教職員にのしかかる。私立高校では教職員への賃金をカットするために、非常勤講師の採用を増やさざるをえなくなる。

しかし、非常勤講師の場合、授業1コマ単位での報酬となるケースが多く、授業の準備、生徒の提出物などのチェックなどコマ以外に使われる時間外労働は支払われない場合も多いとされる。その上、いつ雇い止めにあうか分からないのが実情だ。

少子化になり、生徒の絶対数が少ないのに、昔通りの運営の仕方をすれば、それは教職員の負担となり、果ては保護者や生徒の負担になっている。

高等高校の制度のあり方自体を見直す時期にきており、歪みは全国のあちらこちらで起きている。南陵高校のストライキは氷山の一角で、これからドミノのように各地で起こるかもしれない。

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