韓国の新大統領就任の辞に出てきた「反知性主義」とは何を指すのか?

 

 10日の就任の辞の中で「反知性主義」という単語があり、これ何?という方も多いのではないかと思う。今回はこの反知性主義について言及してみたい。

文脈としては、民主主義の危機を招いた主な原因が「反知性主義」だという流れだった。該当部分の中で重要部を再度掲載してみる。

「見解の異なる人々がお互いの立場を調整し妥協するためには科学と真実が前提にならなければなりません。それが民主主義を支える合理主義と知性主義です。国家間、国家内部の行き過ぎた集団的葛藤によって真実が歪曲され、各自が見たい、聞きたい事実だけを選択したり多数の力で相手の意見を抑圧する反知性主義が民主主義を危機に陥れ民主主義に対する信頼を阻害しています。」

尹大統領のこのような言及について、文在寅政権の行動を「反知性主義」と規定したのではないかという解釈が出ている。

尹大統領は文在寅前大統領に抜擢され検察総長に就任したが、チョ・グク前法務長官一家捜査を指揮し、チョ・グク前長官支持者の激しい攻撃を受けた。

尹大統領の側近は「自由価値の核心は真実尊重」とし「実体的真実発見の過程である捜査が陣営論理で攻撃されることになり、自由主義の失踪に深く心を痛めることになったようだ」と話した。

「国民の力」のある議員は「個人の責任よりは国家責任を強調するポピュリズム行動に対する警戒の意も含まれていると見られる」と話した。

実務陣が作成した就任演説の草稿には、反知性主義(anti-intellectualism)関連内容はなかったという。ある関係者は「就任式の1週間前に当選者の身分だった尹大統領が先がけてこの概念を持ち出した」と話した。

そして、「尹大統領は左右を問わず証拠を無視して事実を歪曲する人々を反知性主義者と規定した。彼らこそ民主主義の敵ということだ」と述べた。

「反知性主義」という単語は1950年代マッカーシズム狂風が吹いていた米国で使われ始めた。

米歴史学者リチャード・ホフスタッター(1916~1970)はマッカーシズムなどを探求した著作『米国の反知性主義』で「反知性主義者は資料や証拠より肉感や感情を基準に事案を判断する」と述べた。

反知性主義はトランプ当選後、米国で再照明され、右派性向のトランプ支持者を批判する際に使われたりもした。

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