平和ボケ国家ニッポン。台湾問題への余計な「口出し」が祖国を滅ぼすワケ

tmsk20220530
 

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、国内でもこれまで以上に高まりを見せ始めた国防に関する議論。しかしそれは極めて冷静さに欠けた、自らを危険な状況に陥れてしまう可能性を含んだもののようです。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、著者で多くの中国関連書籍を執筆している拓殖大学教授の富坂聰さんが、米国を追従し進んで中国の「敵」になりに行くかのような我が国の外交姿勢を強く批判。さらにアジアの知日派大物政治家たちの日本に対する言葉を引きながら、日本政府に対して警告を発しています。

中国問題を中心に精力的な取材活動を行う富坂聰さんのメルマガ詳細はコチラ

 

中国とロシア、北朝鮮は本当に日本の領土を狙っているのか?露ウクライナ紛争後に日本で囁かれる「軍事侵攻」の真偽

中国やロシア、北朝鮮が日本を攻めてくる未来はあるのか──。ロシア・ウクライナ戦争(以下、ロウ戦争)が起きて以降、こんなことをよく訊かれるようになった。

答えは簡単ではない。国際関係は常に多種多様の変数を抱え、変化し続けている。二国間関係もその影響下だ。新型コロナウイルス感染症の拡大によって世界を取り巻く環境は大きく変わったし、ロウ戦争は国際社会に深刻な亀裂をもたらした。今秋に予定されるアメリカの中間選挙も、その結果次第で世の中の空気を一変させることだろう。

つまり、我々の目に映る現実はどれも永遠ではないのだ。二国間関係にも不変なものはない。常に不可測性にさらされている。

実際、多くの専門家が「ない」と判断したロシアによるウクライナ侵攻──仕方がない判断だが──は目の前で起きた。米軍のアフガニスタン撤退に世界は驚愕し、また「老いぼれ」、「ロケットマン」と互いに罵り合い、日本のテレビ番組のなかでは専門家が「開戦前夜」と断じていた朝鮮半島では、トランプ大統領と金正恩北朝鮮労働党委員長が並んで板門店の軍事境界線を越えるというパフォーマンスを演じてみせた。

そうであれば、中国、ロシア、北朝鮮が日本に侵攻する可能性も排除することはできない。しかし、それが目下の情勢で「現実的か」と問われれば、答えはやはり「否」である。

侵攻による収支の計算が合わないからだ。民主主義体制であれ独裁体制であれ、自国の発展に鈍感な国はない。そして現代において領土の拡大がそのまま経済利益につながることはない。戦争のコストもさることながら侵攻後の経済制裁の逆風も重くのしかかる。

武力で奪った土地を支配しようとすれば、住民の強い反発が予測され、大きな負担だ。このプラスマイナスの計算こそが、国のトップに武力行使を思いとどまらせる壁となっているのだ。

現状を見る限り、中ロ朝がそれぞれ大きな代償を払ってまで日本の領土を狙う、とは考えにくい。また蓋然性も低い。中ロ朝軍が海を越えてくる能力にも限界があるだろう。

だが損得の壁は、ある特殊な条件下では機能不全に陥る。例えば歴史的経緯から侵攻を正当化でき、かつ為政者が国民にそれを政治的勝利として報告できるケースや対立する国に対し、公然とレッドラインを宣言し、相手がそれを踏み越えたときだ。そして、最も危ないのは民族感情を煽られた国民が熱狂し、武力行使を求めるケースだ。

第一次世界大戦から戦争は総力戦となり、終わらせることのできない戦争となった。戦勝国は戦いに勝っても破壊尽くされた敗者から得るものはないという厳しい現実と向き合わざるを得なくなった。凄まじい破壊に見合う利益はどこにものだ。

それはロウ戦争も同じだ。たとえロシアが戦争を有利に進めても、ウクライナがロシアを駆逐しても、戦争を避けて経済発展していた場合と比べればどちらも敗者だ。また長期的にみればユーラシア大陸を巻き込んだ広い範囲に大きなダメージが及び、欧州全体を負け組に落としてしまうことだろう。インフレ、エネルギー不足、食糧危機、難民、貿易不振……。たとえ対ロ制裁が効いたとしても欧州に明るい未来はない。

中国問題を中心に精力的な取材活動を行う富坂聰さんのメルマガ詳細はコチラ

 

print
いま読まれてます

  • 平和ボケ国家ニッポン。台湾問題への余計な「口出し」が祖国を滅ぼすワケ
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け