プーチン大統領の蛮行により、多くの罪なき一般市民が命を落としたウクライナ。しかし残虐極まりない独裁者は、この先桁違いの人命を奪おうとも良心の呵責を感じることはないようです。今回のメルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、ロシアによる海上封鎖で2億5,000万人が飢饉の瀬戸際に立たされているというニュースを取り上げ、全世界に及ぶウクライナ紛争の影響を解説。さらに独仏首脳の海上封鎖解除の要請に対して、プーチン大統領が口にした「脅迫」の内容を紹介しています。
世界的食糧危機を誘発するプーチン
ウクライナ戦争は、現状どうなっているのでしょうか?
2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻がはじまりました。プーチンは当初、首都キーウを電撃戦で陥落させようとしました。しかし、キーウは落ちなかった。
そこでプーチンは、東部に戦力を集中させることにしました。ルガンスク、ドネツク支配を確立することを目指し、「ドンバスの戦い」が開始されたのは4月18日です。目標は、5月9日の対ドイツ戦勝記念日までに、ルガンスク州、ドネツク州の支配を確立すること。
ここ少しわかりにくいですが。2014年に独立を宣言し、2022年2月21日にロシアが国家承認したルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国。その支配領域は、ルガンスク州、ドネツク州全土に及んでいません。
だから、プーチンは、ルガンスク人民共和国の支配領域をルガンスク州全土に広げること、ドネツク人民共和国の支配領域をドネツク州全土に広げることを目指したのです。そして、5月9日の対独戦勝記念日で、【勝利宣言】をする。
しかし、2番目の目標も、達成できませんでした。その後どうなっているのでしょうか?
いわゆる「ドンバスの戦い」は、いまもつづいています。「いつまでに勝たなければならない」という縛りがなくなったロシア軍は、ゆっくりですが支配地域を広げることに成功しています。現状ルガンスクの要衝セベロドネツクで激しい戦いが続いています。