プーチンに握られた16億人の命。ロシア“海上封鎖”で世界を「食糧危機」が襲う

 

ロシアは、停戦交渉に動く

朝日新聞DIGITAL5月29日を見てみましょう。

フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相が28日、ロシアのプーチン大統領と電話会談した。ウクライナへの軍事侵攻について仏独の首脳は、ウクライナの主権と領土の一体性を尊重したうえ、交渉で解決策を見つけねばならないと訴えた。

フランスのマクロンとドイツのショルツは、プーチンとの対話をつづけているのですね。しかし、マクロンに関しては、ゼレンスキーを激怒させた事実があります。東京新聞5月14日。

ゼレンスキー氏は12日にイタリアのテレビ番組にオンライン出演し、マクロン氏が「外交的な譲歩をする可能性がある」と述べ、停戦条件としてウクライナの領土を犠牲にすることをけん制した。さらに「プーチンに(停戦への)出口を与える必要はない」とも訴えた。

マクロンはゼレンスキーに、「戦争を終わらせるために、領土の一部をロシアにあげてもいいじゃないか」といいはじめている。それでゼレンスキーは「冗談じゃない!」と激怒した。

「戦争を終わらせるために、ウクライナは領土の一部を断念しろ!」という圧力は、まだあります。5月23日、キッシンジャーのダボス会議での発言が、世界中で話題になりました。ニュースウィーク日本版5月26日から。

アメリカの元国務長官ヘンリー・キッシンジャーは、ウクライナが和平協定の締結にこぎ着けるためには、ロシアに領土を割譲するべきだという趣旨の発言を行い、ソーシャルメディア上で猛烈な批判にさらされた。

というわけで、ゼレンスキーは現在、マクロンやキッシンジャーから、「ウクライナの領土の一部をロシアに譲って、戦争を終わらせろ!」という圧力にさらされているのです。この二人の発言は、もちろんプーチンを喜ばせているでしょう。

ロシアが出してくる停戦条件は、おそらく、

  • クリミアをロシア領と認めること
  • ルガンスク、ドネツク人民共和国の独立を認めること
  • クリミアの北隣にあるヘルソン州と、ヘルソンの西隣にあるザポリージャ州をロシアに割譲すること
  • NATO非加盟の約束

などでしょう。ちなみに、ルガンスク、ドネツク、ザポリージャ、ヘルソンをロシアが支配するようになると、ロシア本土とクリミアが陸路でつながるようになります。

ゼレンスキーは、もちろんこのような要求を受け入れることができません。彼は現在は、「悪の独裁者プーチン」と戦う「世界的ヒーロー」です。もし領土をロシアに譲渡したら、一転「売国奴」「国賊」に転落するでしょう。だからゼレンスキーは、2月24日の侵攻前の状態に戻すことを目指しています。

しかし、この目標の実現は簡単ではありません。いまさら、ヘルソンや、(ドネツク州の一部である)マリウポリを奪還するのは不可能とはいいませんが、かなり難しいでしょう。

というわけで、現状ロシアは、クリミア、ルガンスク、ドネツク、ザポリージャ、ヘルソンをロシア領、あるいは独立国と認めさせることを目指している。一方ウクライナは、「領土は絶対譲らない」とし、戦いをつづける決意を示している」状況です。

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