上昌広医師が問題視。ワクチン4回目接種の対象から若年層を外す政府の迷走

2022.06.01
 

なぜ、我が国は4回目接種の対象を拡大しないのだろうか。知人の政府関係者は「厚労省は『エビデンスがない』という主張を繰り返している」という。そして、この人物は「厚労省の主張には全く合理性がない」と嘆く。私も同感だ。

医学的に「エビデンスがない」ことは、無効であることを意味しない。若年者に対する4回目接種については、臨床研究の結果が報告されていないだけである。その場合、これまでに報告された類似の臨床研究から、効果や安全性を類推しなければならない。これまでの研究を考慮すれば、高齢者と若年成人の間で安全性・有効性が大きく異なるとは考えづらく、高齢者には4回目接種を推奨するが、若年成人には接種の機会さえ与えないことを支持する医学的合理性はない。

幸い、我が国にワクチンは余っている。その気になれば、希望する若年者に接種機会を提供できる。4回目接種のあり方は、海外での接種状況を参考に、国民視点に立った柔軟な対応が必要だ。

上 昌広(かみ まさひろ)
医療ガバナンス研究所理事長。1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

image by: Fotokon / Shutterstock.com

上 昌広

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