上昌広医師が問題視。ワクチン4回目接種の対象から若年層を外す政府の迷走

2022.06.01
 

ウィズ・コロナの時代に、政府に求められる役割は、国民を統制することではなく、国民に正確な情報を提供し、国民の判断をサポートすることだ。

では、4回目接種に関しては、どのような情報が重要なのだろうか。現時点で最も重視すべき臨床研究は、4月13日にイスラエルの研究チームが、米『ニューイングランド医学誌』に発表したものだ。この研究では、60歳以上の高齢者に対して、前回接種から4ヶ月以上の間隔を空け、4回目接種を行ったところ、3回接種群と比べ、接種後7~30日間の感染リスクは45%、入院リスクは68%、死亡リスクは74%低下していた。4回目接種は有効だった。

4回目接種の臨床的有用については、この研究しか発表されておらず、その有効性は医学的に確立しているとは言いがたい。今後の研究が必要だ。ただ、現時点では希望がもてる結果と言っていい。

では、4回目接種の問題は何だろうか。それは、効果の持続が短いことだ。イスラエルの報告では、感染予防効果は、接種後8週間時点では、約10%まで低下していた。2回接種、3回目追加接種の研究では、感染予防効果と比較して、重症化や死亡を予防する効果の方が強く、かつ長期にわたり維持されていた。イスラエルの研究の観察期間は短く、重症化や死亡の予防効果も、感染予防効果と同様に短期間で減衰するのかはわからない。ただ、現時点で4回目接種には過大な期待を抱かない方がいい。

もし、効果の持続が短いのなら、接種時期は流行直前がいい。幸い、コロナの流行には季節性があり、ある程度、予測ができる。コロナは世界中で春・夏・冬と流行を繰り返している。そして、冬の流行の規模がもっとも大きい。2月20日、米CNNが『新型コロナワクチンの4回目接種、秋以降に推奨の可能性も 米』という記事を配信しているように、米国政府は早い段階から冬場の大規模な流行への準備を進めている。

果たして、日本はどうだろうか。確かに、今回の4回目接種で、夏場の流行には対処できるだろう。では、冬の本格流行に対してはどうなっているのだろうか。5回目接種の準備をしているのだろうか。このあたり、厚労省は国民に説明すべきである。

4回目接種に関するもう一つの問題は若年者への接種だ。前述したように、日本は4回目接種を60歳以上の高齢者や持病を有する人に限定している。1月26日に4回目接種の対象を18才以上に拡大したイスラエルとは対照的だ。どちらが適切だろうか。

国民視点に立てば、結論は明らかだ。健康な若年者の中にも、コロナ感染を怖れ、ワクチン接種を希望する人はいる。ワクチンが確保できているのなら、彼らに接種の機会を提供すべきだ。また、高齢者や持病を有する人を本気で守りたいのであれば、彼らに4回目接種をするだけでは不十分だ。中国の上海の大規模検査の結果によれば、オミクロン株の感染者の95%は無症状だった。高齢者や持病を有する人と接触する機会が多い同居者や医療・介護従事者にもワクチンを打たなければ、彼らを介して感染させてしまう。

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