岸田政権に“丸投げ”では日本沈没。参院選前に直視すべき6つの大問題

rizi20220607
 

自民党の茂木幹事長も会合で明言するなど、7月10日の投開票でほぼ日程が固まった参院選。しかしながら日本国内においては、国政選挙を前に必要な議論がまったくなされていないようです。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、そんな現状を「困った状況」とし、議論されるべき6つのポイントを列挙。さらにその各々について、詳細な解説を加えています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年6月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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国政選挙を前にして、国の方向性の議論から逃げるな

参院選は6月22日に公示、7月10日投開票となるようです。現在の情勢としては、岸田内閣の支持率が65%に迫る安定を見せている一方で、立憲民主党は存在感はありません。こうなると改憲勢力を「自公+維新」ではなく「自公+国民」で作れてしまうかどうかが注目点などという、困ったストーリーになってしまいそうです。

とにかく、日本のTVニュースは、いつまでもウクライナ情勢を延々と報じており、これが自民党に有利に働いています。「漠然とした安全保障への不安感」を煽ることで、「結局は自民党が安心」というムードを作りつつ、これに「軍拡も改憲も、安倍だと怖いが、岸田なら安心」という妙な心理も出てきているようです。

実に困った状況です。というのは、日本として国家の方向性を考える上で、重要な議論が全くできていないからです。

そもそも軍事外交面での安全保障が確保できれば、日本という国家は安泰かというとそうではありません。よく考えれば、ロシアや北朝鮮、あるいは中国が日本を攻撃するなどということは、唐突にはあり得ないわけで、その点だけに注目して事実上の政権選択を行うというのはナンセンスな話であるわけです。

現在の日本が選択しなくてはならないのは、具体的な政策です。今回は6つの点を挙げてみます。1)国家債務、2)エネルギー、3)産業構造、4)人口動態、5
)地方の問題、6)時間軸、この6つです。

順番にお話しして参りたいと思います。1)の国家債務ですが、現在の与野党においてはこの問題への危機感が薄れています。MMT(新しい財政理論)などの影響が入ってきていること、また「財務省主導の財政規律主義」が飽きられたことなどが原因だと思いますが、とにかくコロナ対策を口実に湯水のように歳出が垂れ流しになっています。

国家債務については、そんなに怖くないという考え方もあります。例えば、日本の国家債務は個人金融資産と相殺になっているので、国としてのデフォルト(債務不履行)になる危険はないとか、日本の財政規模は巨大なのでIMFとしては救済行動イコールIMFの破綻になる、従って日本の財政は「世界共通の利害として潰せない」というような楽観論もあります。

いずれも全く間違いではありません。ですが、このままダラダラ財政赤字を拡大するだけですと、現在起きているような「緩慢だが止まらない円安」という形で、国の価値がどんどん縮小するということはあり得ます。そして、ある時点からは、制御ができなくなり、気が付いたらハイパーインフレになっていたというシナリオは十分にあり得ます。

そんな中で、コロナ対策そして軍拡と、大規模な歳出を続けるのは、やはり危険であると思います。日本は、個人金融資産の多くが高齢者の生活資金になっています。従って、リスクを取らない種類のカネであり、ベンチャー投資などへの原資はほとんどありません。カネがないので、最先端産業が育たないというのは、90年代から始まっており、現在は非常に厳しい状況です。ですから、前向きだがリスクのある話には公的資金を入れて行かないといけないというのは事実だと思います。

それもやるが、コロナ対策のバラマキもやる、そして軍拡もやるということでは、例えばですが中国との競争ということで考えると、戦わずに破綻というところに追い詰められる危険があります。レーガンは、ソ連を軍拡競争に「誘き出し」て最後は破綻させることに成功しましたが、今、日本が軍拡競争に参加した場合に、破綻するのは日本の方です。この点も含めて、財政の問題というのは厳しい議論が必要と思います。

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