岸田政権に“丸投げ”では日本沈没。参院選前に直視すべき6つの大問題

 

次に2)のエネルギーですが、この円安とウクライナ戦争の中で化石燃料の輸入は量的にも価格面でも厳しい状況が続くのであれば、日本経済は早晩行き詰まります。かといって、排出ガスに関して「苦しいので石炭など化石燃料を許してくれ」などと山本太郎のようなことを言っても、国際社会は許してくれないでしょう。

ここは安全性の高い順に、原発を稼働するという一手だと思います。ドイツの愚かな判断を教訓として、安全性の高い炉を動かすことで、時間を買う、この判断を現役世代を中心に進めて行かないと、日本経済は突然死することもあり得ます。

続いて3)産業構造の問題です。まず、EV(電気自動車)について国策としてどう向かい合うかという点があります。2)のエネルギーと表裏一体の問題ですが、いくら性能の良いEVを作っても車の製造過程が化石燃料まみれでは、世界に対して販売はできなくなります。

昨今、軽自動車規格のEVが話題になっていますが、確かに日産「サクラ」などは寸法や性能では軽自動車規格に収まっています。ですが、巨大なバッテリーを搭載しているために車重は1,070キロに及ぶのです。1トン越えです。例えば、ガソリン車の「軽」ですと、鈴木の「アルト」は650キロしかありません。また、日本の電源が化石燃料由来ということを考えると、つまりトータルな経済性とか、環境負荷では「サクラ」というのは周回遅れなのです。

つまりEV戦略の全体が破綻しているわけで、これに主要部品のモジュール化、標準化の中でシェアを中国に奪われると、日本の自動車産業は壊滅ということになりかねません。原発を稼働させつつ、トータルでの排出ガス低減戦略を真面目に考えないと、全く話が成立しないことになります。

産業構造という点では、観光の問題があります。この間、コロナ禍の中で外国人観光客に対して鎖国を続けた日本ですが、一方ではこの期間も「日本ブームがどんどん膨張」しているのは事実ですし、同時に「欧米における購買力の高まりと円安」ということから、インバウンド旅行者が入った場合の経済効果は巨大な潜在力があるわけです。

一方では以外的な観光公害論などから、この間の鎖国を「良いこと」だと考えて、インバウンドの大量来日を嫌がる世論もあります。また、人手不足の中で、インバウンド6,000万人時代などを支えるのは無理という考え方もあります。仮に、ここで歯を食いしばって、テック系や日本の苦手な金融などの知的産業に大きく国策を振るのであれば、観光業などという利益率の薄い固定費商売に力を入れるわけには行かないという考え方もあります。

一方で、知的産業に振るには教育改革が必要ですが、世論も教育現場もそんな改革を理解する素質はないとなれば、これは絵に描いた餅になってしまいます。結局は大卒50%の高度教育社会であるにもかかわらず、観光立国で食っていくという「ねじれ」たことになるのかもしれません。こうした産業構造の問題は、今後の日本の進路を大きく左右する問題です。

次の4)人口動態は、高齢化、少子化、移民拡大の3つのファクター、更に都会への集中とするのか、地方への再拡散を促すのかというファクターも含めて、これも非常に具体的な問題だと思います。

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