岸田政権に“丸投げ”では日本沈没。参院選前に直視すべき6つの大問題

 

人口動態と関連して、5)地方の問題も真剣に考えなくてはなりません。一時期、地方ではコンパクトシティ化の問題が議論されました(青森県弘前市など)。過疎地に拡散している人口を、都市部に集約して、除雪や救急あるいは買い物などのインフラ負荷を軽減するのが、コミュニティ延命の上で必要だという考え方です。

ですが、実際の集約対象である「ポツン」の家庭は、家屋の資産価値がゼロである一方で、住居費にかけるキャッシュフローもゼロという家計構造になっています。これを都市に移転するのは、事実上不可能であり構想は成立しませんでした。

では、「ポツン」を放置して過疎地の人口が自然消滅するのを待っていると、地方財政は恐らく持たないわけで、集約はやはり必要です。となると、事実上ゼロ負担で都市部の代替住宅に移転させることになるわけで、とにかく、地方創生にはコストがかかります。この点に関しては、どう考えても現役世代による地方産業のGDP拡大とセットで考えなくてはダメで、そのような地方政策を真面目に考える勢力を組み立てて行かなくてはなりません。

地方の鉄道について、コロナ禍で利用の減少が加速する中で維持か廃線かという議論がどんどん走っています。ですが、これも鉄道があるのに「空港」と「高規格道路」というハコモノを「トリプル」で要求した地方エゴの結果と考えれば、改めて総合的なコミュニティの再設計という形での見直しが必要です。

一方で、北海道の鉄道インフラに関しては安全保障面での配慮も必要でしょう。爆撃で大きな穴の空いた滑走路や高速道路を再建するのと比較しますと、レール二本を引けばいい鉄道というのは、有事における維持と回復という面ではメリットがあります。宗谷線、函館本線の山線などは、どう考えても国の管理で維持すべきと思いますがどうでしょうか?

最後に議論したのが6)の時間軸の問題です。改革を行うとして、加速しないと破綻を回避できないわけで、時間軸を考えた施策というのがどうしても必要です。最悪の事例が、女性管理職の比率アップの問題で、この問題は福田康夫内閣の時代から延々と「どうしても目標に達しない」などと政官がブツブツ愚痴っていたわけです。ですが、この問題は、「年功序列人事を壊す」という改革とセットでやらないと、スピードは出なかったわけで、結局のところ均等法から延々と滅私奉公した世代が「ようやく課長昇進年令になった」という時点で初めて数字が出るというようなヒドイことになっていたわけです。

教育にしてもそうで、プログラミング教育をやるなら教育の全体に合理性を一貫させるだけでなく、社会変革から逆算して施策を実行しないとダラダラ時間ばかりがかかります。例えば、今の小学校1年生からフルで新カリキュラムに移行しても、その世代がGDP貢献するのは16年後の2038年で、下手をすると国家破綻に間に合わないかもしれないのです。

ジョブ型雇用にしますなどと言っても、次の、つまり2023年入社の新卒からスタートでは、2022年入社の総合職がリタイアするまでジョブ型の組織にはならないということなんでしょうか。もっとも、そんな悠長な会社はその前に消滅しているでしょうが。とにかく、国の方向性が今のままでは絶対に駄目なのは明白です。1990年から32年もの間、延々と改革ができないままダラダラ遺産を食い潰すだけで、その結果としての貧困と円安がここまで迫っても、まだ改革ができない、これは有史以来の前代未聞のことだと思います。改革の時間軸の問題ということも、大きな議論の柱にしなくてはなりません。

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