ウクライナ戦争を“利用する”もうひとつの国で「ほくそ笑む」人物とは

shutterstock_180408071
 

終わりが見えないロシアによるウクライナ侵攻。開始から4カ月が経過しましたが、各国の動きはさまざまです。そんな中、この戦争が始まってから、急激に注目度が増した国があります。アメリカや西側諸国にとっては非常に重要なこの国について解説していきます。

話題が絶えないトルコという国

トルコという国は話題がありすぎて何から話すか非常に難しい国です。NATO内ではアメリカに次ぐ第2位の軍事力を保有する「軍事大国」ですが、その一方で経済的にはボロボロで、凄まじいインフレと通貨(トルコリラ)下落が止まらない国でもあります。

存在感を増し始めたエルドアン大統領

この国の国際的な影響力はトップのエルドアン大統領が握っています。彼は2014年に大統領になって以降、権威主義的な手法で国民には嫌われながらも、圧倒的な支持層を掴む政治家として君臨してきました。

しかし、現在はトルコ国内の経済悪化は「彼の政策のせいだ」との非難が止められず、四苦八苦しています。

トルコのインフレ率は5月のCPIが73.5%の上昇という、G20の中で1位、世界でも6位という驚異的なインフレ率となっていますが、この原因は「利上げの敵」と自身を呼び、経済の冷え込みを嫌って低金利政策を持続しているエルドアン大統領自らが招いているものです。

いよいよ保守層の支持率まで低下してきたことで、来年6月に予定されている大統領選挙で敗北を予想する声が大きくなってきている状況にありました。

そんな中、ウクライナ危機が始まった途端に、エルドアン大統領はしたたかな外交手腕で、急激にその存在感を増してきているのです。

【関連】バイデン、過去最低の支持率で危険水域に。歴代の中で最も“インフレに弱い”政権構造の実態

エルドアン大統領がウクライナ危機で行ったコト

彼がウクライナ危機で行ってきたことを整理すると、まず「バイラクタルTB2」と呼ばれる軍事ドローンをウクライナに供給し、これがロシア軍への攻撃に於いて大きな役割を果たしたことで、ウクライナつまり西側に大きなメリットをもたらしたと共に、トルコの防衛技術の高さを見せつけました。

今は他国からもかなり引き合いが増えているそうですが、因みにバイラクタル社の社長はエルドアン大統領の娘婿で、一族でがっちりと軍需産業に食い込んでいます。

続いて2つめですが、ロシア軍の軍艦が黒海に入るのを国際条約に基づいて阻止し、食料を輸送するウクライナ船舶を黒海内でトルコ海軍によって保護しようとロシア側と交渉したことです。

そして3つめは、ロシアのプーチン大統領と対話できる数少ない指導者と言うことで仲介役を買い、ロシアとウクライナの和平協議を2度主催しました。

こういった動きはアメリカも評価して、バイデン大統領から電話を掛けるなど西側諸国からの評価の向上につながった一方で、エルドアン大統領はロシアのプーチン大統領にもきっちりと恩を売っています。

まず、NATO加盟国ながらロシアへの経済制裁には反対し、一切制裁を課していませんので、トルコが今、金持ちロシア人とロシアマネーが流れ込む逃避先となっていることは、プーチン大統領にとって大きな支援となっています。

そして、5月に大きく報道されたのは、北欧2か国、スウェーデンとフィンランドの、NATO加盟に反対していることです。

事前にはNATO全加盟国が賛成すると言われていたのですが、エルドアン大統領のトルコのみが、両国がクルド人武装組織のPKKを支援しているということを理由に反対しています。

これは本当に支援しているかどうかではなく、反対することによって、ひとつはプーチン氏に大きな恩を売ること、そしてもうひとつは、エルドアン大統領の目下最大の外交政策である、イラク北部のクルド人武装組織PKKへの軍事攻撃について、西側にこの軍事攻撃に強硬に反対させない、という狙いもあります。

そして何といっても、「トルコを守る強い大統領」としての国民へのアピール、支持率アップも同時に狙っていることは明白でしょう。

アメリカとロシアの両方に恩を売り、一石2鳥どころか3鳥4鳥も狙うエルドアン大統領のしたたかさに対し、今後アメリカバイデン大統領がどう対応していくか、注目していきたいと思います。

【関連】なぜ中国が好かれ米国は嫌われるのか?バイデンが新興国から拒絶される当然の理由

出典:メルマガ【今アメリカで起こっている話題を紹介】欧米ビジネス政治経済研究所

image by : shutterstock

print
いま読まれてます

  • ウクライナ戦争を“利用する”もうひとつの国で「ほくそ笑む」人物とは
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け