6月22日から24日にかけて、KDDI、ソフトバンク、NTTの順に開催された株主総会では、株主からさまざまな質問が飛び出し、専門家にとって目を離せないものとなったようです。ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが特に注目したのが、ソフトバンク株主によるプラチナバンドの1つを楽天に譲渡する提案と電波状況改善の取り組みへの質問でした。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、宮川潤一社長による回答を掲載。ネットワーク改善については、創業者の孫正義氏が「チーフオフィサー」に就いたとの事実に驚きながらも、その本気に期待感を示しています。
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ソフトバンク株主「プラチナバンドを返上して楽天に譲渡したら?」と提案。宮川潤一社長の回答は…
今週、通信各社で株主総会が行われた。株主からの質問は相変わらずぶっ飛んだものあり、個人的な問題ありと、目が離せないものだった。そんななか、今年、興味深かったのはソフトバンクのネットワークに関する質問であった。
株主から「900MHz帯と700MHz帯という2つのプラチナバンドを保有しているが、コスト面で無駄ではないか。900MHz帯に1本化した上で700MHz帯は総務省に返上し、電波オークション経由で楽天モバイルに譲渡したらいいのではないか」という、かなり具体的な提案があったのだ。
それに対して宮川潤一社長は「700MHz帯は5Gで使用している。基地局は既に1万2000局建設済みで、運用済み。既に1500万人以上の5Gユーザーが700MHz帯を利用しており、免許返納は現実的ではない。
900MHz帯はLTEの主力バンド。他キャリアに比べても、多くのトラフィックを運んでいる。5Gへの移行時期については、LTEのサンセットの時期まで現実的には難しい。700MHz帯は5Gで、900MHz帯はLTEでの運用が当社の方針だ」と、楽天モバイルへの譲渡するという提案を真っ向から拒否した格好だ。
さらに注目なのがエリア展開だ。株主から「携帯電波が届かないエリア解消に向けた取り組みを教えて欲しい」という質問に対して、宮川社長が「順次、増強に向けて取り組んでいる。将来的には衛星を使うなどして解消に努めたい。最近、また孫創業者がチーフネットワークオフィサーを『またオレがやるんだ』ということで、頑張っている。これからメキメキと改善が行われるものだと信じている。一生懸命頑張って改善をしていきたい」と答えたのだった。
いまではすっかりソフトバンクグループの社長として、ビジョンファンドに従事しているかと思われた孫さんが、まさかモバイルの「チーフネットワークオフィサー」になっているとは想像もしなかった。ソフトバンクはプラチナバンドを手にして以降、他社に負けないネットワーク品質になりつつあり、もはやそんなに注力しなくてもいいんじゃないかと思えるが、まさか孫さんが自ら頑張って改善に向けて動いているとは驚きだ。
世界の株価に左右されるビジョンファンドから目を背けたいのか、真意は謎だが、孫さんが本気でネットワーク改善に注力しているとなると、他社も戦々恐々だろう。
一方で、NTTドコモは自社の鉄塔をJTOWERに売却するなどして、エリアの拡大競争からは、距離を置こうとしている。KDDIはスペースXと組んで衛星をバックボーンにしてルーラルエリアのネットワーク対応を強化。楽天モバイルにはスペースモバイル計画がある。
今後、数年で、各社のネットワーク戦略に違いと成果が見えてくるだけに「どこが日本全国でつながるか」という視点で、4社の実力をチェックすると面白いことになりそうだ。
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