中共の上層部では、今まで強固だった習近平の独裁体制が崩れ、ほされていた李克強首相が経済政策の責任者として復権したとか、習近平はゼロコロナ策が失敗して権力が低下しているとか言われている。しかし、ゼロコロナが非現実的な超愚策であることは前からわかっていた(広範なPCR検査をすると偽陽性が増え、永久にゼロにならない)。上海などを延々と過激に都市閉鎖する中国のゼロコロナ策は、コロナ対策のふりをした習近平の権力強化策である。中共の権力闘争はずっと前から上海が焦点であり(もともと上海は英国が作った沿岸の洋風な町で、伝統政治勢力が強い北京の対極にいる)、だから北京でなく上海だけが長く都市閉鎖されている(それと国際流通網を破壊するために深センなど)。これから習近平が失脚していくとしたら、それは「ゼロコロナの都市閉鎖をやって上海派を封じ込めようとしたのに習近平は勝てなかった」ことになる。しかし習近平が失脚に向かっている兆候は少ない。むしろ習近平は上海狙い撃ちのゼロコロナ策によって、政権中枢から上海派をさらに外し、独裁を強化する可能性の方が大きい。
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最近、北朝鮮もコロナが大流行していると大騒ぎしている。これまでコロナをほとんど無視してきた金正恩が突然騒ぎ出して奇妙だ。これも習近平を見習って、コロナ対策を使って金正恩の権力を強化するための策略だろう。
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中国もロシアも、大して悪い国でない。「悪さ」でいったら米英の方が上だ。米国側が中露を敵視するのは不合理で超愚策、そして隠れ多極主義だ。経済やエネルギー安保のことを考えると、米国側全体が、中露と仲良くした方が得策だ。しかし、米英はもう10年以上も中露を敵視しており、いくら愚策でももうやめない。米国は中露を敵視し続けて覇権を低下させ、中露を結束台頭させていく。その流れは多分もう変わらない。変えられるかもしれないのは、同盟諸国が米国につきあって中露を敵視して自滅していくという流れの方だ。同盟諸国、とくにアングロサクソン以外の日独仏韓などは、米国と一緒に自滅していく必要などない。米国からできるだけ距離を置き、可能なら非米側に転入した方が、未来の国民たちの幸福のために良い。実際はそうでなく、同盟諸国のマスコミ権威筋は中露敵視・同盟美化の妄想をばらまき続け、多くの国民がそれを軽信している。方向転換は難しい。
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(無料メルマガ『田中宇の国際ニュース解説』2022年5月22日号より一部抜粋)
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