騙され続ける日本国民。米英の「中ロ敵視政策」という天下の愚策

tnk20220701
 

民主主義を踏みにじり、力で自国の主張を押し通す専制国家と見なされている中国とロシア。少なくとも我々日本人はそれを事実として受け入れていますが、どうやら米英とその同盟諸国のメディアにより「信じ込まされている」に過ぎないようです。今回の無料メルマガ『田中宇の国際ニュース解説』では著者で国際情勢解説者の田中宇(たなか さかい)さんが、そう判断せざるを得ない根拠を列挙し解説。さらに日本の未来の幸福を考えるのならば、中ロサイドに転入するのが得策との見解を記しています。

中国と戦争しますか?

2月末のウクライナ開戦で米国と同盟諸国(米国側)がロシアへの過激(で自滅的)な敵視・経済制裁を開始する一方、中国やインドBRICS、イラン、アラブ、アフリカ中南米など非米諸国はロシア制裁を拒否し、米国側と非米側の世界的な対立構造が立ち上がった。ロシアは、米国側が買わなくなった石油ガス資源穀物など輸出品を、代わりに中国を筆頭とする非米諸国が買ってくれるので、米国側に強く制裁されても困っていない。ロシアは、米国側から敵視されるほど中国と結束し、中国の弟分(劣位同盟国)になっていく。その一方で米英はロシアだけでなく、ロシアを支援する中国など非米側も敵視する傾向を強めている。英外相は、NATOをロシアだけでなく中国も敵視する軍事同盟にしようと提案している。

Russia Forges New Partnerships in Face of West’s ‘Total Hybrid War’
米欧との経済対決に負けない中露

米国務長官は、トランプ前政権が進めていた米中経済分離策を踏襲すると発表した。中国政府(中共)も、ゼロコロナ策をしつこく演じて上海や深センなど沿海諸省で都市閉鎖を延々と続けて経済を封鎖し、嫌気をさした米欧企業が中国から出ていくように仕向けている。米国だけでなく中国の方も、米中分離を進めていることになる。中国は発展途上国だった従来、米国主導の世界経済システム(経済覇権)の中で米国側の下請けをやって発展してきた。米中分離は、中国側から見ると、途上国から大国に成長した中国が、米国側に依存するのをやめて、一帯一路など中国主導の地域覇権体制を組み、その中で米国側と関係なくやっていく方向転換を意味する。

Blinken to Unveil Biden’s China Strategy
‘Stop asking why’: Shanghai tightens COVID lockdown

米国から見ると、米中分離は、中国を米国覇権の傘下から押し出して困らせる経済制裁のつもりなのだろう。しかし中国はもともと経済的な対米自立が目標なのだから、米中分離は対中制裁になっていない。米中分離はむしろ、米国側の企業が安く製造できる下請け国、14億人の巨大市場を失う動きとなり、米国側にとって自滅策だ(米上層部は、自滅策と知りつつ米中分離を進めて中国を非米型大国・地域覇権国に押し上げているのだから、私から見ると隠れ多極主義)。

The Race To Break The Russia-China Alliance & The “Ukraine Of The Asia Pacific”

経済制裁がダメなら戦争で潰せば良いって?それは無理だ。中国もロシアも核保有国だ。しかも中露は結束を強めている。米国側が、中露どちらかと親しくしつつ、もう一方と敵対しているなら、敵対している方を経済制裁して困窮させつつ、武力行使もありうるぞと脅したりして譲歩させることも可能だった。しかし、中露が結束しているので経済制裁しても効かない。中露が他の非米諸国と組んで米国側を無視して経済を回せてしまう。ロシアはSWIFTのドル決済システムから追放されたが、ルーブルや人民元で決済できている。むしろ米国側の方が、中露を制裁したことで資源や食糧の不足と高騰に悩まされ、ドルの覇権も危うくなって自滅している。今のように米国側が経済面で負けている状態を軍事面で挽回しようとすると、米欧と中露のガチな核戦争になって人類消滅みたいなことになる。米上層部がいくら馬鹿でも、それはやらない。となれば、米国側は経済面でどんどん自滅していくだけだ。

米露の国際経済システム間の長い対決になる
米諜報界を乗っ取って覇権を自滅させて世界を多極化

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