リモートワークをしていた社員たちをオフィスに呼び戻そうとする動きは米国にもあるようです。しかし、優秀なエンジニアたちは簡単には要請に応じないのだとか。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、著者で世界的エンジニアの中島聡さんが、米国のエンジニアの間でリモートワークが一般化することを見込んだ「リモートワーカー・ビザ」創設のアイデアを披露。円安と賃金格差によってドルで収入を得ている人にはますます魅力的な、安くて美味しくて安全な“天国”日本で働いてもらい、お金を使ってもらうことが、衰退していく日本を活性化させると提言しています。
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私の目に止まった記事
● As Microsoft is showing, workers may never come back to the office | The Seattle Times
新型コロナのためにリモートワークを強いられていた会社の中には、そのままリモートワークを続けることを前提に、オフィスを閉じてしまった会社もありますが(私が投資家兼エンジニアとして関わっているmmhmmはその良い例です)、多くの会社は元の状態に戻そうとしています。
シアトルのMicrosoftもそんな会社の一つで、「最低でも50%の時間はオフィスで過ごすように」という指令を出したところですが、この記事によると、そうは簡単には戻って来ないのが現状であるそうです。
日本の常識で考えれば、会社が「オフィスに戻れ」と言えば戻ってきそうなものですが、そもそも人材の流動性が高い米国で、引く手数多のエンジニアたちは、気に入らないことがあったらすぐに転職してしまうため、会社側も強いことが言えないのです。
ちなみに、このままリモートワークが一般化するのであれば、それに合わせた法律や経済政策を考えるべきだと私は思います。
特に、今回日本に来てつくづく感じたのですが、わずか650円(米ドルだと5ドル)で美味しいランチが食べられ、治安も良くて清潔な日本は、米ドルで収入を得ている人たちにとっては、天国のように住みやすい場所です。
参院選では、どの政党も色々なことを言っていますが、このまま少子高齢化で社会が衰退していく日本をどうやって立て直すのかについて、まともな提案を出せている政党はいないように私には思えます。
私がもし参院選に出るのであれば「リモートワーカー・ビザの発行」を、経済のカンフル剤として提案します。具体的には、
- 米国籍の会社でフルタイムで働くリモートワーカー対象
- 年収は最低でも10万ドル(家族連れは15万ドル)
- 2年間の長期滞在ビザ。出入り自由
- 日本での就労は不可
- 国税は払う必要なし。地方税のみ年収の10%を徴収
というものです。こんな形のビザを発行することにより、「外貨を稼いでいる米国人」を日本に呼び寄せ、日本でお金を使ってもらうことにより、日本の景気を持ち上げようという政策です。
わずか1万人にこんなビザを発行しただけで、少なくとも合計で1350億円の年収を持った人が日本で暮らす様になる上に、地方には135億円の新たな税収が生まれます。
彼らに心地よく暮らしてもらうには、受け入れ体制も重要ですが、基本はネット環境さえ整っていればなんとかなるので、まずは1万人ぐらいからスタートし、需要に応じて受け入れ体制を整えつつ、地方都市への呼び込みが出来れば、効果的でかつ、即効性のある景気対策になると思います。(『週刊 Life is beautiful』2022年7月5日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみ下さい。初月無料です)
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