フィンランドとスウェーデンの誤算。NATO加盟が導く破滅的な未来

 

ロシアがこれから崩壊・弱体化していくなら、もうロシアに配慮してNATO不加盟を続ける必要はない。むしろロシア崩壊のとばっちりを受けないよう、米英やEUと協力してやっていかねばならない。これからロシアが崩壊するなら、NATOの役目は「ロシア敵視」から「ロシア崩壊の悪影響を欧米諸国が受けないようにすること」になる。プーチンはロシアが崩壊する前に北欧や東欧を手当たりしだいに侵攻するかもしれない。早くNATOに入っておいた方が良い、と2カ国は考えたのでないか。

The West On The Path Of Full-Spectrum Confrontation With Russia

2カ国がNATO加盟の意志を正式表明する2日前の5月13日、米バイデン大統領が2カ国の首脳と三者ビデオ会議を行い、米国が強く後押しするから早くNATOに入れと2カ国に勧め、2カ国はそれに乗ることにした。バイデンは、これからロシアの軍や政府や経済が崩壊していくシナリオを、米諜報界の明確な分析として2カ国の首脳に伝えたのでないか。ロシアが今後も従来の強さを維持する可能性がかなりあるなら、2カ国はロシアに敵視されて自国の安全を脅かされかねないのでNATOに入りたくない。バイデンは、世界で最も権威がある米諜報界の分析として、ロシアがこれから崩壊し弱体化するシナリオを2カ国に伝え、2カ国はその分析を信じてNATOに入ることにした。

Biden Encourages Finland & Sweden’s Move Into NATO As Russia Cuts Electricity Supply Overnight

この話の大問題は、ロシアがこれから崩壊するという話が大ウソであることだ。むしろ逆に、ウクライナ戦争でロシアの優勢が続き、石油ガス資源穀物などの国際価格の高騰でロシア経済も好調さが加速して、ロシアが台頭して欧米が劣勢になっていく可能性が大きい。2月末のウクライナ開戦以来、米国側のマスコミは「ロシア軍は作戦失敗で苦戦し、敗北寸前だ。ウクライナ軍もうまく反撃している。ロシアは負ける」と大ウソの稚拙な戦争プロパガンダを喧伝し続けてきた。しかし最近はNYタイムズが「ロシアは開戦直後にドンバス(ウクライナ東部2州)の30%(ロシア系民兵団の開戦前からの支配地)しか支配していなかったが、今や支配地を広げてドンバスのほとんどを支配している(露軍は計画通りに作戦を遂行できている)」と認める記事を出している(ロシアはこれから負けるかもと、記事の後半でプロパガンダをぶり返しているが)。ロシアはウクライナで負けていない。勝っている。

Ukraine War’s Geographic Reality: Russia Has Seized Much of the East
ウソだらけのウクライナ戦争

プーチンは開戦当初から、ウクライナで露軍の作戦遂行をゆっくり進め、意図的に戦争を長引かせている。その最大の理由は、戦争状態が長引くほど、米国側が自滅的な対露経済制裁を続け、米国側の経済が衰退し、石油ガス穀物の高騰でロシア側の優勢が増すからだ(戦争をゆっくり進めるもう一つの理由は、最終的にロシアの影響圏に戻るウクライナで、できるだけ市民を殺さず、建物を破壊しないようにするため。ウクライナ国民の半分近くは極右が嫌いでロシアの方がましだと考えておりロシアの味方)。それなのに米国側のマスコミ権威筋や諜報界は「露軍は、ウクライナで作戦が失敗しているのでゆっくりしか進めない。露軍は苛立って街区をどんどん破壊している」と大間違いの分析・喧伝を続けている。

Some US media outlets begin to cover events in Ukraine more objectively – Russian embassy
ノボロシア建国がウクライナでの露の目標?

(街区の破壊の多くは、自国民を愛していないウクライナ極右民兵団が、露軍のせいにするためにやっているのだろう。米国側のマスコミは、街区の一部しか破壊されていないのに市街全体が破壊されたかのような報道を続けてきた。露政府は、欧米人が激怒した方が自滅的な対露経済制裁をやりたがって経済的にロシアを有利にしてくれるので濡れ衣を放置している)

濡れ衣をかけられ続けるロシア

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