ホンマでっか池田教授が指摘。露呈したEU「エネルギー政策」の嘘

 

EUの盟主的存在であるドイツとフランスではエネルギー政策が全く違っているが、化石燃料を締め出そうという点では軌を一にしていた。2021年の上半期のドイツの発電量の割合は再生可能エネルギー47.9%(風力23.4%、太陽光11.2%、バイオマス8.9%、水力4.4%)、石炭26.3%、原子力12.8%、ガス火力12.2%である。一方、フランスは原子力77.7%、火力5.0%、水力12.6%、風力3.1%で、ほぼ原子力に頼っている。

その結果、少し古いが2016年の統計では、フランスは一人当たりのCO2排出量も年間約4.4トンと、OECD加盟国の平均の7.6トンよりずっと少ない。一方ドイツは再生可能エネルギーを進めているにもかかわらず8.9トンと、日本の約9.0トンとさして変わりはない(ちなみにアメリカは14.9トン、中国は7.1トン)。ドイツの冬は寒いので、ロシアからの天然ガスを家庭用の暖房に使っているので、CO2が出るのは分かるとして、それと同時に再生可能エネルギーのインフラ整備の際にCO2が沢山出るのだろう。

そうやって、ヨーロッパ諸国は着々と化石燃料の締め出しを画策していたのだが、2022年2月24日に勃発したウクライナ紛争によって、状況は全く変わってしまったのである。特にロシアから天然ガスを大量に輸入していたドイツは紛争によってロシアからの天然ガスの供給が止まると死活問題なので、ここに来てなりふり構わず、エネルギー確保に奔走しているようだ。

この先、紛争が長引けば、ロシアからの天然ガスや石油・石炭の供給が先細りするのは確実なので、とりあえず、できるだけたくさんの化石燃料をロシアから買っておこうと、紛争勃発後の100日間で、日本円にして2兆円近くの化石燃料をロシアから買ったのである。一方で、ウクライナを支援し、一方でロシアから燃料を買うことで、ロシアの戦費を賄っているという矛盾したことをしているわけだ。背に腹は代えられぬということだね。

EUはロシアからの石炭を2022年の8月から輸入禁止にした。もともと石炭火力はCO2を排出するということで、EUのエネルギー戦略からは廃止の方向で検討されていた。ところがエネルギー危機に直面しているドイツは、休止中の石炭火力発電所を再稼働すると発表した。これはCO2削減というEUの基本政策に対する反抗である。

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