7月2日未明に発生したKDDIの大規模通信障害は、全面復旧まで86時間を要し、最大約3900万人の利用者に影響を及ぼしたと伝えられています。KDDIに対しては、利用者はもちろん、政府やメディアからも広報・周知が不十分との指摘が多くあったようで、これに違和感を抱いたと語るのは、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。国民生活に欠かせないインフラのトラブルであれば、周知の役割を担ってきたのはメディア側であり、周知されていないとすれば、メディア自身の「伝える力」が弱くなっている証拠と鋭く指摘しています。
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KDDIの障害に対する告知は適切だったのか──「メディアの伝えるチカラ」はどこまで通じたのか
KDDIの通信障害をめぐり、指摘されているのが、広報・周知体制の不味さだ。金子恭之総務大臣からは「日常生活や社会経済活動に必要不可欠ななかで、サービスが2日以上にわたり利用が困難になったことは、あらためて遺憾に思っている。特に復旧作業が終了したと公表した後、音声通話が利用しづらい状況が、長時間継続したことなどを踏まえれば、利用者の周知広報については、通信事業者の責任を十分果たしたと言えない」と指摘。木原誠二内閣官房副長官も「利用者への周知・広報については、通信事業者としての責任を十分に果たしたとはいえない」と言及した。
3日に行われた記者会見でも新聞やテレビといったメディアから、KDDIの広報体制に対して質問が飛んだ。それに対して高橋誠社長は「auショップで本当に多くのお客さまがお並びいただき、たくさんのご意見をいただき、本当に申し訳なく思っている。障害の広報活動については、パソコンであればご覧いただけるのではないかということで、掲載した。ただ、確かにお年寄りの方などには十分ではなかったという点は真摯に受け止めたい。方法はなかなか難しいところがある。メディアでも数多く取り上げていただき(KDDIでは)あえてそこまではやらなかったということになる」と語った。
この質疑でちょっと違和感を抱いたのだが、新聞やテレビが「一般に伝わっていないぞ」とKDDIを攻撃するというのは、とどのつまり、「一般人に新聞やテレビが見られていないのではないか」ということにつながりはしないか。
確かに通信障害は土曜、日曜という週末が中心であったため、いつもに比べて、朝の情報番組などが少なく報道される時間は少なかったかも知れない。しかし、それでもニュース番組は放送されているのだから、本来であれば、テレビを見て、状況を知るはずの人も多かったはずだ。
シニアなど、テレビを見れば状況が把握できたはずなのに、auショップに駆け込むというのは、シニアにおいてもテレビ離れが進んでいる証拠ではないか。
8日に起こった安倍晋三元首相の襲撃事件も、自分は記者説明会に参加している間にSNSで知り、その後経過や死亡のニュースも、ラウンドテーブルに参加している間に受け取った。また、事件の衝撃的な瞬間を捉えた映像も、結局、一般市民がスマホで撮影した映像だったりもする。
今回のKDDI通信障害によって、テレビや新聞といった一般メディアの「伝える力」が全体的に弱っている。いざという時に頼りにならない現実を知らされたようにも感じた。
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