与党大勝ではなく野党大敗。立民が描くべき「中進国」日本の未来

 

日本は世界の中でどの辺に位置するのか?

そのためにはまず、日本が世界の中でどの程度の存在なのかについての錯覚を解くことが必要である。

普通の名目GDPのランキングを見ると、日本はまだ世界第3位の大国である(表1)。とはいえ、少し前まで日本は第2位で「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと言われていた時代もあったことを思うと、今そこに中国がいて、日本はその中国の3分の1以下の経済規模であることを思い知るべきである。しかも名目GDPは各国ごとの計算を為替レートで換算するので、近頃の円安では日本がこの順位を確保できるのかどうか。また年々の変化を見る場合は、物価の変動分を取り除いた実質GDPで見なければならない(表2)。第2次安倍政権がアベノミクスを発動した2013年と、安倍が辞任した20年の実質GDPが、ほとんど全く同じであるのはどうしてかということを、彼はキチンと説明してから亡くなって欲しかった。

さて、GDPの取り方には色々あるが、一番実感に近い比較の仕方は購買力平価方式による1人当たりの数字とされる。同じマクドナルドのハンバーガーが実際にいくらで食べられるかを比べていると考えればよい。その第1~10位には日本の姿はなく(表3-1)、世界順位で33位、アジア太平洋では15位である(表3-2)。

また、有名なスイスIMD世界競争力ランキングでは、日本は世界34位、アジア太平洋で15位(表4)。どうもこの辺りが最近の日本の定位置で、しかもそこからズルッズルッと下がる傾向にあるので、まあ「中進国」というか、自国を「大国」であるという錯覚からそろそろ卒業しないと、この先の行方がますます分からなくなるのである。

もう1つ、最近話題となった数字は、日本は韓国に大きく引き離された年間平均賃金(表5)。こういうこと、すなわち日本の国の行末を問題にし真剣に討論し合わないような選挙は、正直なところほとんど何の意味もなく、ただ自民党が振りまく煙幕の中を野党が見当違いの方向でウロウロしているだけの茶番でしかない。日本の未来を語れる野党よ、出よ!である。


《表1》名目GDP世界ランキング第1~10位まで
    〔IMF、2021年〕
順位  国名    GDPnom(億$)
 1  アメリカ   229,975
 2  中国     174,580
 3  日本      49,374
 4  ドイツ     42,259
 5  イギリス    3,1876
 6  インド     3,0419
 7  フランス    29,355
 8  イタリア    21,013
 9  カナダ     19,908
 10  韓国      17,985


《表2》日本の実質GDPの10年間推移
    〔IMF、億円、21年と22年は推計〕
2013 528,248
14  529,823
15  538,081
16  542,138
17  551,220
18  554,440
19  553,107
20  528,231
21  536,792
22  549,633

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