祖父・岸信介からのつながり。安倍元首相と統一教会のただならぬ関係

 

会見した統一教会の田中富広会長によると、山上容疑者の母親は、1998年頃に入会した。2009年から17年にかけてはあまり活動していなかったが、2~3年前から1か月に1回くらい教会の行事に参加していた。2002年頃に母親が破産したことを耳にしたという。

そして、安倍元首相と教会の関係について田中会長は以下のように語った。

「安倍元首相が友好団体『UPF』(天宙平和連合)にメッセージを送ったことはある。その団体の世界平和運動に賛意を示すためだ。UPFとの関係についてはUPFにアプローチしてほしい。ただし、安倍氏が家庭連合(統一教会)の会員だったり顧問だったりしたことはない」

「UPF」は統一教会の教祖、文鮮明氏(2012年死去)が提唱して2005年9月に創設された。現在はその妻、韓鶴子氏が統一教会の教祖であり、「UPF」の総裁でもある。

安倍氏のメッセージは、2021年9月12日に「UPF」が主催したWEB集会「神統一韓国のためのTHINK TANK2022希望前進大会」にオンライン出席したさいのものだ。

「日本国・前内閣総理大臣の安倍晋三です。UPF主催のもと、よりよい世界の対話と諸問題の平和的解決のために、およそ150ヵ国の国会首脳、国会議員、宗教指導者が集う希望前進大会で世界平和をともにけん引してきた、盟友のトランプ大統領とともに演説する機会を頂いたことを、光栄に思います」「今日に至るまでUPFと共に世界各地の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁ら、皆様に敬意を表します」

これに対し、「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(代表世話人・平岩敬一弁護士)は「統一教会が広く宣伝に使うことは必至」として、安倍氏あてに「公開抗議文」を出している。「今回のような行動を繰り返されることのないよう強く申し入れます」という内容だ。

同連絡会は、統一教会と関わらないよう政治家に警告を発してきた。国会議員、地方議員が、統一教会やそのフロント組織の集会・式典などに出席したり、祝辞を述べたり、祝電を打ったりする例が増えているからだ。霊感商法や合同結婚式など統一教会をめぐる報道がこのところめっきり少なくなったことも、集票組織を求める政治家の行動を緩めている。

考えなくてはならないのは、山上容疑者が統一教会に恨みを抱くなかで、「UPF」への安倍氏のメッセージ発信をどう受け取ったかである。

その後の調べで、山上容疑者が「安倍元首相のメッセージ動画を見て統一教会とつながりがあると思った」と供述していることがわかっている。

田中会長は、教会と「UPF」は友好団体ではあっても、それぞれ目的の違う別団体なのに、山上容疑者はその区別がついていないのではないか、と言う。しかし、創設者や現在のトップは同じである。

山上容疑者は、日本の最高実力者ともいえる政治家が、統一教会の広告塔のような役割を担ってしまっていると感じたのかもしれない。

統一教会は文鮮明氏により1954年5月、ソウルで創設された。日本での布教活動は1958年からはじまり、64年に宗教法人の認可を受けた。

文鮮明氏が1968年、反共産主義政治団体「国際勝共連合」を日本に設立したさい、協力したのが、安倍氏の祖父、岸信介元首相である。岸氏は73年4月、東京・渋谷の統一教会本部で、「アジアの危機と青年の使命」と題する講演を行っている。ちなみに、国際勝共連合の名誉会長は、あの笹川良一氏だった。

こうしたこともあり、安倍氏と統一教会の関係については昔から噂が絶えなかった。むろん、どのていどの付き合いだったかは不明だ。ビデオメッセージは、票につながりそうな団体に対してありがちなリップサービスに過ぎないという見方もある。

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