地方に行くほど高い壁。誰もが心地よい社会にする「LGBT就労支援」の意義

 

しかしながら日本社会の偏見は根強い。LGBTQが精神疾患と結び付けられてきたこと、今もその考え方が岩盤のように存在していることを考えると、まだまだハードな取組かもしれない。

これは近代国家になった日本が長く精神疾患者を「座敷牢」で家庭が「保護」という名で管理し外に出さない政策を是としてきた文化の延長線上にあると思う。

理解できないものを議論によって解決するのではなく、管理によって社会の表面から「見えなくする」ことで、社会の平安を取り繕う手法である。

今でもこの思想性は社会に根付いているから、まだまだ議論が必要だ。この中にあって、ReBitによる人材育成は必須である。

周囲の無理解から二次障害になるケースをいかに防げるのか、という点も重要ではあるが、そもそも「無理解」がなくなれば、何ら問題が生じず、むしろ多様な考え方や視点が自然に身に付いている社会はきっと誰もが居心地がよいはずなのである。

2014年の障害者権利条約の批准から考えても、差別解消法の制定や障害者雇用率の引き上げや合理的配慮に対する企業の取組の加速化は確実に支援が必要な人がこの社会に存在し、それらの当事者と共存していくマインドは形成されてきた。

このマインドの醸成に向けての相談も増えてきた。これまでは「うちにはLGBTがいないから大丈夫」という意見が出ていたが、「いないのではなく、声が上げられないだけ」であること、それは社内だけではなく社会全体の取組であることを認識しなければならない。

さらに、オンラインでどこでもつながれる環境が整いながらも、これら性的少数者等の新しい枠組みに関する対応は都市と地方との間での情報格差も存在する。

それは「直接に対面していない」のが大きい。地方の支援態勢も手薄と言われる中で、今回の取組に呼応する地方でまた新しい声が上がってくることを期待したいとも思う。

この記事の著者・引地達也さんのメルマガ

初月無料で読む

 

image by: 認定NPO法人 ReBit

引地達也この著者の記事一覧

特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ジャーナリスティックなやさしい未来 』

【著者】 引地達也 【月額】 ¥110/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 水曜日 発行予定

print
いま読まれてます

  • 地方に行くほど高い壁。誰もが心地よい社会にする「LGBT就労支援」の意義
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け