安倍元首相の死をきっかけに今一度考えたい「言論とは何か」ということ

 

自浄作用を促す個の言論

ところが、イギリスのジョンソン首相が保守党の党首を辞任することになった過程に、言論の原点を見たような気がしました。コロナ禍で厳しい行動規制が行われるなか、ジョンソン首相が官邸などで何度もパーティーを開いていたこと、与党・保守党幹部の性的問題への対応が不誠実だったことを理由に、主要閣僚や50人ほどの政府高官が辞任する事態になりました。

辞めた閣僚が辞任を促す発言をするなど、与野党から厳しい批判を受けたのです。組織にありながら、個としての意見をしっかり伝えられる土壌があることに、言論、民主主義の成熟した姿を見た気がしたのです。

組織からの造反という形が、個の存在として許される自由があるように感じたのです。もちろん政治の世界ですから、きれい事では片付かないことは承知しています。しかし少なくとも、黒を白とは言い含めない潔さは、自浄作用ということばを信じさせるにたる政治家の矜持が示されているように思いました。

文書改ざん・破棄などの報道に接していた僕には、イギリスの政治のあり方がとても新鮮に見えました。これなら若い人の選挙離れもなくなるのではないか。言論と民主主義のあり方に密かな期待を抱いたのです。

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未來交創株式会社代表取締役/文筆家 朝日新聞 元校閲センター長・用語幹事 早稲田大学卒業、事業構想大学院大学修了 十数年にわたり、漢字や日本語に関するコラム「漢字んな話」「漢話字典」「ことばのたまゆら」を始め、時代を映すことばエッセイ「あのとき」を朝日新聞に連載。2019年に未來交創を立ち上げ、ビジネスの在り方を文章・ことばから見る新たなコンサルティングを展開。大学のキャリアセミナー、企業・自治体の広報研修に多数出講、テレビ・ラジオ・雑誌などメディアにも登場している。 《著書》 『マジ文章書けないんだけど』(21年4月現在9.4万部、大和書房)、『きっちり!恥ずかしくない!文章が書ける』(すばる舎/朝日文庫)、『漢字んな話』(三省堂)など多数。

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