自浄作用を促す個の言論
ところが、イギリスのジョンソン首相が保守党の党首を辞任することになった過程に、言論の原点を見たような気がしました。コロナ禍で厳しい行動規制が行われるなか、ジョンソン首相が官邸などで何度もパーティーを開いていたこと、与党・保守党幹部の性的問題への対応が不誠実だったことを理由に、主要閣僚や50人ほどの政府高官が辞任する事態になりました。
辞めた閣僚が辞任を促す発言をするなど、与野党から厳しい批判を受けたのです。組織にありながら、個としての意見をしっかり伝えられる土壌があることに、言論、民主主義の成熟した姿を見た気がしたのです。
組織からの造反という形が、個の存在として許される自由があるように感じたのです。もちろん政治の世界ですから、きれい事では片付かないことは承知しています。しかし少なくとも、黒を白とは言い含めない潔さは、自浄作用ということばを信じさせるにたる政治家の矜持が示されているように思いました。
文書改ざん・破棄などの報道に接していた僕には、イギリスの政治のあり方がとても新鮮に見えました。これなら若い人の選挙離れもなくなるのではないか。言論と民主主義のあり方に密かな期待を抱いたのです。
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