ロシアによるウクライナ侵攻以来、声高に主張される頻度が確実に増した台湾有事論。この先いつ起きたとしても不思議はないとするメディアも存在しますが、はたして緊張はそこまで高まっているのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、日本を代表する軍事専門誌に掲載された論考の内容を引きつつ、日米に流布する「台湾有事論」がいかに誤ったものであるかを解説。さらに論考の冷静な結論部分を紹介し、全面的な賛意を示しています。
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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2022年7月18日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:高野孟(たかの・はじめ)
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
間違いだらけの「台湾有事論」/『軍事研究』7月号の論文に注目
『軍事研究』という月刊誌は自衛隊寄り、軍事オタク寄りではあっても「右寄り」ではなく、それは同誌自身が「1966年の創刊以来いかなる政府・政治勢力、いかなる思想的立場からも中立」と謳っている通りで、軍事技術的な合理性を本旨としているが故に、時の政府の政策や安倍晋三的右翼の立場と矛盾したりそれを批判したりする場合も珍しくはない。同誌7月号に載った軍事ライターの文谷数重の論考『間違いだらけの台湾有事』もその一例で、「台湾有事は現実的にはあり得ない。日米の台湾有事論は誤っている。現状では、戦争事態が発生する危険性はむしろ少ない」と述べているが、これは私と同意見である。
彼は、21年3月に米上院の公聴会で米海軍大将が「中国による台湾回収は6年以内」と証言したことがきっかけで台湾有事論が一気に広まったが、この証言は取るに足らない内容で、まして「6年以内」と言うのはこの大将の「個人の勘」のようなものでまるで根拠がないと指摘。さらに「中国には侵略的傾向があるから台湾を侵略する」「日米同盟を強化し、防衛費を増やすべき」といった短絡した主張を繰り広げる「右派メディア、保守メディア」を、台湾有事の何たるかを知らずに騒いでいるだけとボロクソに批判するのである。
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